発売前からそのスペックと価格についてSNSで物議を醸していたアイリスオーヤマ初のノートPC「LUCA(ルカ) Note PC」ですが、蓋を開けてみると発売当日に売り切れと好調なスタートのようです。
前評判としてはかなりの酷評でTwitterで少し拾ってみても以下のように否定的なコメントで溢れていましたが実際のところどうなんでしょう。
アイリスオーヤマのノートPC、メモリ4GBだとかCPUがCeleron NだとかストレージがeMMCだとかで本当にゴミだけど、純正office入ってんならまぁしょうがないのかなって思ってよく見たらキングソフトで紛うこと無いゴミだった
— みみじゃ (@mimija01) March 22, 2021
アイリスオーヤマのPCがどんだけヤバいかというと、2021年にプレステ2をプレステ5の価格でゲーム機のこと知らない人向けに売ってるくらいヤバい
— iMSさん(鳥取) (@IMS1212) March 22, 2021
アイリスオーヤマPCをホームセンターでうっかり買っちゃいそうな人に、「そのPC、あなたのスマホより低スペックですよ」って耳元で囁いてあげたい
— シアン / Circles' Square (@hachiman_cian) March 22, 2021
確かにメモリ4GB、ストレージ64GBは今のノートPCのスペックとしては少し頼りなく、5万円という価格を考えてももっとコスパのいいPCが沢山ありそうではあります。
しかし新規参入の難しい家電業界において、僅か10年で今の地位を確立した総合家電メーカーのアイリオーヤマが売れない商品を作る訳がないと思いますし、事実発売当日に売り切れているのには何か理由があるはず!
ということで「LUCA Note PC」について先入観に囚われず僕なりに本気でチェックしてみたので実際のところどうなのか紹介します。(結論から先に見たい方はこちらから)
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「LUCA Note PC」のスペックと活用シーンの考察
まずアイリスオーヤマの「LUCA Note PC」のニュースリリースを見てみましょう。
[clink url=”https://www.irisohyama.co.jp/news/2021/?date=0322″]
つまり想定されるニーズとしては①文部科学省のGIGAスクール構想に対応した小学生から高校生までの「学習用端末としての活用」と、②コロナ禍のニューノーマルな生活様式に於ける「テレワークやオンライン会議などへの使用」です。
まずはカタログスペックを確認ながら、コンセプトにある活用シーンを想定してみたいと思います。
製品名 | LUCA Note PC |
---|---|
品番 | IPC-AA1401-HM |
画像 | ![]() |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
ディスプレイ | 14インチ フルHD (1920×1080) |
CPU | インテル® Celeron®プロセッサーNシリーズ Gemini Lake 4コア 1.1GHz |
メモリ | LPDDR4 4GB |
ストレージ | eMMC 64G |
無線LAN | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac |
通信 | Bluetooth®4.2 |
インターフェイス | USB3.2 Gen1 Type-A×2 Type-C×1/miniHDMI×1(HDMI 2.0対応)/ 3.5mmオーディオジャック×1/microSDカードスロット×1 |
カメラ/マイク/スピーカー | インカメラ:100万画素/内蔵マイク/ 8Ω 1Wx2内蔵 |
製品サイズ(mm) | 約W323.15×D219.4×H19.3( 突起部除く) |
重量 | 約1.3㎏ |
付属品 | 電源ケーブル、ACアダプター、取扱説明書、保証書、 WPS Office 2 ダウンロード版 Standard Edition |
参考価格(税抜) | 49,800円 |
発売日 | 2021年3月25日 |
引用元:アイリスオーヤマ「LUCA Note PC」スペック表 |
別途、AIチャットbotによる24時間365日のサポートも付帯しており、初めてのPC購入という人にも安心のサービスです。
子供の学習用端末としての活用
画像引用元:photoAC
文部科学省GIGAスクール構想におけるWindowsでの標準スペックと「LUCA Note PC」比較してみました。
GIGAスクール構想標準スペック(Windowsの場合) | LUCA | |
OS | Microsoft Windows 10 Pro | ◯ |
CPU | Intel Celeron 同等以上 (2016年8月以降に製品化されたもの) |
Celeron 4コア |
ストレージ | 64GB | 64GB |
メモリ | 4GB | 4GB |
モニタ | 9~14インチ(タッチパネル対応) | 14インチ |
無線LAN | IEEE 802.11a /b /g /n /ac以上|LTE通信対応も可 | ◯ |
キーボード | Bluetooth接続でないハードウェアキーボード | ◯ |
音声接続端子 | マイク・ヘッドフォン端子 | ◯ |
外部接続端子 | 1つ以上 | 4つ |
バッテリー | 8時間以上 | 9時間 |
重量 | 1.5kg未満 | 1.3kg |
カメラ | インカメラ|アウトカメラ | インカメラ |
引用元:文部科学省「GIGAスクール構想について」 |
はい、見事に標準スペック通りです。そういう意味ではアイリスオーヤマに落ち度はありません。(そもそも標準スペック以下でも別に落ち度はないのですが)
むしろGIGAスクール構想の標準スペックの低さが改めて気になりました。
文科省が掲げる「GIGAスクール構想」のテーマ |
1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援 を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化さ れ、資質・能力が一層確実に育成できる教育 環境を実現する |
これまでの我が国の教育実践と最先端の のベストミックスを図ることにより、教師・児童生 徒の力を最大限に引き出す |
「教師・児童生徒の力を最大限引き出す」前にPCのスペックが先に限界を迎えそうです。
ただ、標準OSに「Windows 10 Pro」を搭載しており、PC間でのデータやファイルの共有やセキュリティ面の機能が高いのでグループワークなどには向いていそうです。
テレワークやオンライン会議などへの使用
画像引用元:photoAC
僕がこの1年間実際にテレワークをしてきて必要だと感じたのはネットワークの安定性と多少のカメラ性能くらいでしたので「LUCA Note PC」は問題なく使えるレベルだと思います。
通信に関しても無線LANの規格(Wi-Fi5)も、Bluetooth®4.2も最新とはいかないまでもオンライン会議程度であれば必要十分なはず。
またこの価格帯のPCには珍しくOfficeがプリインストールされています。WindowsではなくWPS(旧 KINGSOFT)Officeなのがちょっと残念ですが、高い互換性やコピーと言っても過言では無いUIで問題なく使えると思います。
ただストレージ容量が少ない点はやはりネックでしょうか。扱うデータ量によってはオンラインストレージやSDカードの準備が必要です。
実用性という意味で明らかにキビしそうな点
画像引用元:photoAC
ここからは「LUCA Note PC」の実用的に厳しそうな仕様を見ていきたいと思います。
・メモリ4GBは明らかにギリギリ
・ストレージ64GBは容量不足
・「Celeron」のCPUはどうなの?
メモリ4GBは明らかにギリギリ
まずはメモリですが、「Windows 10 Pro 64bit」の基本動作要件では「最低2GB以上」となっていますが、快適な使用を考えるとメモリ4GBは明らかにギリギリです。
実際には他のアプリケーションも動かす訳ですから本来8GBはあってもいいくらいです。
今時、もっと低価格のノートPCで「Windows 10 home」でも8GB以上が一般的ですから、否定的な意見が多いのも仕方ありません。
ちなみにアイリスコールで確認したところメモリの空きスロットはなく換装も不可との回答でした・・・
ストレージ64GBは容量不足
画像引用元:photoAC
「LUCA Note PC」ではSSDよりもコンパクトで省電力の「eMMC」というストレージを使っていますがコンパクトで商品電力が少ない反面、速度はSSDより劣ります。また容量的も64GBしかないのは少なすぎです。
ここでも「Windows 10 Pro 64bit」が問題になってきますが、このOS自体が 「32GB以上の空き容量」を必要としているので、実際に使える保存領域は約半分の32GBと想定されます。
写真や動画の保存、新たなアプリケーションのインストールする場合などはもちろん、そもそもWindows10のアップデートの際の容量は足りるのか少し心配です。
一応、背面から容易に「M.2 SATA SSD(容量512GBまで)」の増設は可能ですので別途費用を払うことで解決は出来ます。(OSのブート(起動)まで出来るかは不明です)
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「Celeron」のCPUはどうなの?
SNSではよくCPCが「Celeron」という点を叩くコメントも多いですが、「LUCA Note PC」のCPUはCeleron(セレロン)の「Gemini Lake 4コア」とはそのスペックから「Celeron N4100」と想定されます。
「Celeron N4100」と現行の廉価ノートPCでよく使われている「Core i3 1005G1」などと比較するとベンチマークスコアは半数以下とやはり低スペックです。
とはいえ4コアですし、画像や動画編集など重たい作業をしない前提であれば大きな問題ではない気がします。
「LUCA Note PC」はどういう人に向いているのか
では逆にどんな人に向いているPCなのか見ていきましょう。
・用途がテレワーク用や学習用に限定される人
・データの保存先はオンラインストレージやSDカードで充分な人
・Windows 10 Proを使いたい人
▷アイリスオーヤマ「 LUCA Note PC」特設サイトをチェック
用途がテレワーク用や学習用に限定される人
活用シーンの考察で触れた通りスペック的に余裕とはいえませんが、学習用・テレワーク用としては普通に活用出来そうです。
モバイルPCとしては14インチフルHD(1920×1080)モニターは充分ですし、重さも1.3kgとサイズを考えると少し軽めで持ち運びも問題なさそう。
駆動時間も9時間あれば出先でバッテリー上りになることは少ないはずです。
別にメインのPCがあり、サブ機は「必要最低限で充分」と割り切れるのであれば使用上の問題はなさそうです。
データの保存先はオンラインストレージやSDカードで充分な人
ここまでストレージについて何度か触れましたが、「LUCA Note PC」にはmicroSDスロットが標準装備されており、SDカードとオンラインストレージを合わせればストレージ不足の問題はかなり軽減します。
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もともとその前提で「Windows 10 Pro」を採用し、ストレージを最小限としているのかも知れません。自宅のWi-Fiを使うのであれば通信コストを考える必要もないですしね。(出先は?)
Windows 10 Proを使いたい人
「LUCA Note PC」の標準OS「Windows 10 Pro」は「Windows 10 home」と比較してセキュリティ性能が高く企業やビジネスでの使用を想定した以下の機能が搭載されています。
①「リモートデスクトップ機能」
・他のPCやスマホでの遠隔操作機能
②「グループポリシーの管理機能」
・コントロールパネルや指定ソフトの起動禁止などの制限機能
③「BitLocker機能」
・ドライブの暗号化
④「キオスクモード」
・特定の操作に限定させる操作制限機能
⑤「Hyper-V」
・ハードウェアの仮想化機能
上記の通り一般使用での必要性はともかく、「Windows 10 home」からのアップグレードには約14,000円ほどかかるので需要があれば最初から「Pro」が搭載されている「LUCA Note PC」を選ぶ価値はあるかも知れません。
他社競合品とのスペック比較
最後に同価格帯14インチノートPCの他社競合品とのスペック比較です。
先に結論からお伝えしておくとスペックと価格で比較するならやはり「LUCA Note PC」より他社品の方が優位と言わざるを得ません。(図では優勢な項目に色付けしています)
アイリスオーヤマ LUCA None PC |
DELL Vostro 14 3000 |
HP 14s-dk1000 |
ASUS VivoBook 14 M413DA |
ドンキホーテMUGA3 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit |
ディスプレイ | 14インチ フルHD (1920×1080) | 14インチ フルHD (1920×1080) | 14インチ フルHD (1920×1080) | 14インチ フルHD (1920×1080) | 14.1インチ フルHD (1920×1080) |
CPU | Celeron N 4コア |
Ryzen 5 3500U 4コア |
Ryzen 3 3250U 2コア |
Ryzen 3 3250U 2コア |
Celeron N3350 2コア |
メモリ | LPDDR4 4GB | LPDDR4 8GB | LPDDR4 8GB | LPDDR4 8GB | LPDDR4 4GB |
ストレージ | eMMC 64GB | M.2 SSD 512GB | M.2 SSD 256GB | SSD 256GB |
eMMC 64GB |
インターフェイス | USB3.2 Gen1 Type-A×2 Type-C×1 miniHDMI microSDスロット |
HDMI USB3.2 Gen1x2 USB2.0 SDスロット |
HDMI USB3.1 USB3.0 Gen1x2 Type-C×1 SDスロット |
HDMIx1 USB3.1 USB3.0 Gen1 Type-Ax1 Type-Cx1 microSDスロット |
USB3.0 TYPE-A x2 miniHDMI microSDスロット |
インカメラ | 100万画素 | 詳細不明 | 92万画素 | 92万画素 | 30万画素 |
Office | WPS Office | 別途 | 別途 | 別途 | WPS Office |
重量 | 約1.3㎏ | 約1.59㎏ | 約1.53㎏ | 約1.45㎏ | 約1.35㎏ |
税別価格 | ¥49,800 | ¥52,980 | ¥46,200 | ¥46,800 | ¥19,800 |
他社品と比較するとまずメモリとストレージが弱い点と、少し前に話題となったドンキの「MUGA3」とスペック的には同等にも関わらず2倍以上の価格差があるのが気になります。
「LUCA Note PC」の優勢な点は OSが「Windows 10 Pro」であること、安価なWPS製とはいえOfficeが標準搭載されている点、あとは軽さでしょうか。
「LUCA Note PC」を検討する上でこの辺を天秤にかけていくことになりそうです。
まとめ
以上いろいろ調べてみましたが結論としては甘めの評価で「人を選ぶ」というところでしょうか。
・用途がテレワーク用や学習用に限定される人
・データの保存先はオンラインストレージやSDカードで充分な人
・Windows 10 Proを使いたい人
以上のような人は「LUCA Note PC」も選択肢に入るかも知れません。
ただ同様の用途で使えるもっとコスパのいいPCもあること、メモリの増設も出来ず今後の拡張性に関してあまり期待できないことは事前に含み置いた方がいいと思います。
最後に個人的な経験則から一つ加えると特にPCは「今は取り敢えずこれで!」という買い方はしない方がいいです。(「LUCA Note PC」のことを指している訳ではありませんよ!)
思うように使えないPCはその時にイライラするだけでなく、苦手意識に繋がる場合もありますので、予算の許す範囲で出来るだけ吟味して是非納得のいくものを購入して欲しいと思います。
Windows OSなら僕ならこれかな。
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