イギリスの老舗オーディオブランド「KEF」から、新しいブックシェルフスピーカー『Coda W』が登場しました。
アンプを内蔵したアクティブスピーカーながら、価格は比較的控えめ。
Bluetoothはもちろん、HDMIやUSB-C、さらにはレコードプレーヤーを繋げるためのフォノ入力まで備えた万能型で、どんな環境でも気軽に、KEFらしい“Hi-Fi(高忠実度)”サウンドを楽しめる──端的にいえば、そんな一台です。

実はこの「Coda」というシリーズ、1970年代に登場したKEFの伝統的なライン。
その”Coda”が、現代のライフスタイルに合わせて再設計されたのが、このCoda Wで、懐かしさを感じるミニマルな佇まいと、今っぽい使いやすさがとにかくうまく同居しています。
今回はメーカーさんから実機をお借りして、自宅でじっくり試聴してみました。
普段から僕が愛用している「KEF LSX II LT」とも聴き比べながら、Coda Wがどんなシーンにフィットするのか、実際の使い心地を中心にレビューしていきます。
小ぶりだけど存在感のある佇まい|KEF Coda W

デザインと質感
KEF Coda Wを箱から出してまず感じたのは、「思ったよりしっかりしたサイズ感だな」ということ。ブックシェルフスピーカーとしてはまだ小ぶりな方だけど、手に持つとずっしりとした重量感があります。
見た目の印象はシンプルなのに、どこかクラシカルで上品。KEFらしいモノづくりのこだわりを外見からも確かに感じます。

本体の質感はマットで落ち着きがあり、前面のストライプ状スリットも良いアクセント。指紋が付きにくく、光の当たり方によってわずかに陰影が浮かび上がるのがとてもきれいです。

中央に配置されたプロペラ状の「Uni-Qドライバー」は、KEFの象徴とも言える存在で、ひと目でKEFだとわかるデザインは、置いておくだけでもちょっと誇らしい気持ちになりますよね。

背面には整然と配置された入出力端子が並び、設計の丁寧さも伝わります。

サイズ感とLSX II LTとの比較
リビングやワークスペースにすっと収まるちょうどいいサイズ感。
ただ、普段使っているLSX II LTと並べてみると、Coda Wのほうがひと回り大きめです。幅も奥行きも少し余裕があり、「より本格的なスピーカー」という印象。


音質についてはこのあと比較しますが、このサイズ差は確かに音の伸びや安定感にもつながっているように感じます。
LSX II LTが”デスク上で完結するスマートなスピーカー”だとしたら、Coda Wは”部屋全体をしっかり包み込むスピーカー”。コンパクトさよりも、音のスケール感を重視する人にはぴったりかも。

設置面では、奥行きが少しあるぶん壁との距離を取る必要がありますが、そのぶん立体的な音の広がりが得られる印象。
見た目のバランスと音の厚み、どちらも両立させる考えられたサイズ感だと思います。

主な仕様とスペック
Coda Wの主な仕様とスペックを、LSX II LTと並べて比較してみました。
| KEF Coda W | KEF LSX II LT | |
|---|---|---|
![]() | ![]() | |
| カラー | ●●●●● | ●●● |
| ドライバー ユニット | 第12世代 Uni-Qドライバー (HF:25 mm / LF&MF:130mm) | 第11世代 Uni-Qドライバー (HF:19mm / LF&MF:115mm) |
| 周波数レンジ (85dB/1m時) | 38Hz – 20kHz | 49 Hz – 47 kHz |
| 周波数応答 (85dB/1m時) | 41Hz – 20kHz | 54 Hz – 28 kHz |
| 内蔵アンプ出力 | LF: 70W / HF: 30W | LF: 70W / HF: 30W |
| 最大出力 | 102 dB | 102 dB |
| 入力 | HDMI ARC 光入力 USB Type C RCA RCA(MM型フォノステージ付き) Bluetooth | HDMI ARC 光入力 USB Type C RJ45 イーサネット(ネットワーク) Bluetooth |
| 出力 | RCAサブウーファー出力 USB Type C (5V DC) | RCAサブウーファー出力 |
| Bluetooth規格 | Bluetooth 5.4 (aptX Adaptive / aptX Lossless対応) | Bluetooth 5.0 |
| Wi-Fiネットワーク | − | ◯ (2.4GHz / 5 GHz) |
| サイズ | 285 x 168 x 268 mm | 240 × 155 × 180 mm |
| 重量 | 11.3kg(1セット) | 6.8kg(1セット) |
| 公式ストア価格 | ¥129,800 | ¥137,500 |
| Check | Check |
LSX II LTを「ストリーミングや手軽さ」を意識したスマートオーディオ寄りとするなら、Coda Wは「コネクティビティと音の純度」を重視した“純粋なHi-Fi”寄り。
カナちひどちらもKEFらしい定位感と音の正確さは共通しているので、あとは活用シーンやデザインの好みで選べばOKだと思います。
カラーバリエーション
Coda Wは、ニッケルグレー、ダークチタニウム、ヴィンテージバーガンディ、モスグリーン、ミッドナイトブルーの5色展開。どのカラーも派手さを抑えた落ち着いたトーンで、インテリアに自然となじみそうです。


今回僕が選んだのは「ニッケルグレー」というカラーですが、照明の当たり方でほんの少し表情が変わるような奥行きのある色味で、結構お気に入り。


柔らかな丸みを持つLSX II LTも魅力的ですが、日常に馴染む上品さと、スピーカーとしての存在感のバランスが絶妙なCoda Wは、KEFが積み重ねてきたデザイン哲学をしっかり継承したプロダクトだと思います。


接続端子と操作性|使い方を選ばない”全部入り”


多彩な入力端子であらゆる機器に対応
Coda Wの大きな特徴のひとつが、この入力端子の充実ぶり。
プライマリスピーカーの背面には、HDMI ARC / USB-C / 光デジタル / アナログRCA / MMフォノ入力と、考え得るほとんどの端子が揃っています。


これだけの端子が詰め込まれていながら、並びはとても整然。どの端子も間隔が広めに取られているので、ケーブルの抜き差しがしやすいのもポイント。


Coda Wはフォノアンプを内蔵しているため、レコードプレーヤーを追加機材なしで直結できるのも大きな魅力。
Bluetoothは最新のVer.5.4を採用し、aptX Lossless/aptX Adaptiveにも対応。
スマホやPCからのワイヤレス再生でもCD相当(44.1kHz/16bit想定)の高音質で聴けるのは、「手軽に良い音を楽しみたい」という僕にとって、かなりうれしい仕様です。


さらに、サブウーファー出力にも対応しているので、映画鑑賞などで低音をより深く響かせたい場合の拡張性も問題なし。
コンパクトな見た目に反して、将来的なアップグレードにも柔軟に対応する設計はさすがです。
トップパネルの操作性
KEFのスピーカーとしては珍しく、Coda Wには本体上部に操作ボタンが配置されています。
入力切り替えや音量調整など、基本操作のほとんどはこのパネルで完結。スマホアプリの「KEF Connect」を立ち上げなくても、手を伸ばすだけで操作できるのは便利ですよね。


ボタンはタッチ式で物理的なクリック感はなし。とはいえ、わずかな凹みとバックライトの点灯で操作状況をフィードバックしてくれるので、操作性に不安はありません。


LEDインジケーターの光も控えめで、暗い部屋でも眩しさを感じません。夜に照明を落として音楽を聴く時間にもちょうどいい、やさしい配慮が感じられます。


シーン別に感じた使いやすさ
せっかくこれだけ多彩な端子が揃っているので、いくつかの環境で実際に使ってみました。
結論から言うと、どの接続方法でも音の質がしっかりしていて、シーンに合わせてちょうどいいバランスを保ってくれるという印象でした。
テレビとHDMI ARCで接続
まずはリビングのテレビとHDMI ARCで接続し、映画を再生。
ARC接続のため、テレビの電源に連動して自動でON/OFFしてくれるなど、操作性はサウンドバーとほぼ同等レベルの手軽さです。


オーディオと映像では求められる音の性質が少し違うので、正直それほど期待はしていなかったんですが、意外にもセリフの抜けが良い。俳優の声が中央にピタッと定位して、まるで映像の中から直接聴こえてくるような自然さがあります。
サブウーファーを組み合わせたサウンドバーと比べると低域の量感ではさすがに敵いませんが、物足りなさは感じないレベルで、音の広がりも必要充分。


テレビのスピーカーから置き換えるというのも十分に検討できるクオリティだと感じました。



正直、ブックシェルフスピーカーとテレビの相性がここまで良いなんて、これまで知りませんでした。
MacBookとUSB-Cで接続
次にMacBookとUSBケーブルで直結。
Coda WのUSB入力は最大192kHz/24bitに対応しており、実際に聴いてみると驚くほどノイズが少なく、解像感も非常に高め。ボーカルの息づかいやピアノの減衰までくっきりと描かれ、音の輪郭がシャープに浮かび上がるような印象です。


音量を上げても刺々しさがなく、長時間聴いても疲れにくいのがこのスピーカーの良さ。逆に音量を絞っても情報量がしっかり残るので、作業BGMにもぴったりだと思います。
サイズこそやや大きめですが、デスクトップで本格Hi-Fiを再現できるという贅沢さを、これほど簡単に再現できるのもKEF Coda Wの大きな魅力です。


aptX Losslessでワイヤレス接続
最後は、aptX Lossless / Adaptive対応のトランスミッターを介してiPhoneからBluetooth再生。
AAC接続でも十分にクリアですが、Losslessで聴くと明らかに情報量が増し、ベースラインの厚みや残響の伸びがよりリアルに描写されます。


ケーブルレスの気軽さでここまでの音が出るのは正直驚きで、この構成が一番Coda Wのポテンシャルを感じられるかも。
Wi-Fi接続は非対応ですが、これだけ手軽にロスレス再生が楽しめるなら、確かに“あえて省いた”という判断もうなずけますね。
音質レビュー|Uni-Qで描く自然で立体的なサウンド


自然で透明感のあるHi-Fiサウンド
KEF Coda Wの音を実際に聴いて感じたのは、どこまでもクリアで包み込まれるような感覚。
音そのものの良さもそうなんですが、スピーカーの位置を意識することなく前方からふわっと包みこまれるような音の立体感がとにかく心地よくて、試聴のつもりが気がつくと長時間スピーカーの前で身体を揺らしていました。


この空間全体が音を奏でるような表現こそが、KEF独自の「Uni-Qドライバー」の本領。
ツイーターとウーファーを同軸上に配置する点音源構造によって、全帯域がひとつの位置から放射されることで音が自然に混ざり合うような構造になっているんです。


結果として、音の定位が明確で空間のどこにいても印象が変わらないという、KEFらしい心地よいサウンドが生まれています。
音の傾向はニュートラルで、変に味付けをしていない原曲そのままの素直なトーン。
低音は量感よりも締まりを重視している印象で、「ドンドン」響くというより深く沈み込むような表現にチューニングされています。


一方で中高域はとても繊細。ボーカルやアコースティックギターの音は透明感がありながらも冷たさがなく、ほんのり温かみを残しているのが印象的です。
この絶妙なチューニングを支えているのが、KEF独自のDSP「Music Integrity Engine」。


Coda W専用に最適化され、各帯域が無理なく繋がるように制御されているおかげで、長時間でも聴き疲れせず、ずっと聴いていられる音になっています。



派手な演出や強調はなくても、気づくとずっと耳を傾けてしまう。そんなスピーカーです。
聴き比べて感じた違い|Coda W × LSX II LT
というわけで、KEF Coda Wのサウンドを少しでも体感してもらえればと思い、空気録音で収録してみました。
防音室でもない自宅の書斎で、環境音などもそのままですが、同条件でKEF LSX II LTとも比較しています。ぜひヘッドホンをつけて、少し大きめの音量で聴き比べてみてください。
- 再生デバイス:MacBook Pro(14インチ|M2 Pro)(USB-C接続)
- 収録マイク:TASCAM DR-05XP
- 使用楽曲:Alex-Productions – Nature Beauty II
どちらもKEFらしい透明感のある素直な音質ですが、Coda Wは筐体がひとまわり大きい分、特に低音にゆとりがあり、余韻も滑らか。一方の LSX II LTはよりシャープで、音の輪郭がはっきりと表現されているように感じます。
これはスピーカー自体の性能差やチューニングの違いというよりも、エンクロージャーの容積やUni-Qドライバーの口径差によるものという印象で、音質自体に明確な優劣はありません。
それよりも個人的には、「音場の違い(個性)」を重視して、デスクなど近距離で音に包まれたいならLSX II LT、リビングのように少し距離をとってゆったり聴くならCoda W ──そんな使い分けがしっくりくると思います。
KEF Coda W の気になった点


Coda Wをしばらく使ってみましたが、正直なところ「これといった欠点」はほとんど見当たりません。10万円台前半という価格を考えると、完成度は相当高いというのが僕の感想。
とはいえ、導入シーンによっては「気になるかも」というポイントもあるので、いくつか挙げておきます。
Wi-Fiでのストリーミング再生は非対応
Bluetooth 5.4に対応したCoda Wは、aptX Lossless / aptX Adaptiveなど高音質コーデックでの再生が可能。そのため、音質面では日常的なワイヤレスリスニングでは十分な品質を確保しています。
また、左右スピーカーは有線接続で96kHz/24bitにリサンプリングされるため、実用上の音質低下はほとんど感じません。
| 接続方法 | サンプリングレートとビット深度 |
|---|---|
| 光入力 | 最大 96kHz/24bit |
| USB Type-C | 最大 192kHz/24bit |
| HDMI ARC | 最大 1.411Mbps PCM (CD相当:44.1kHz/16bit ×2ch) |
| ネットワーク ※非対応 | 最大 384kHz/24bit |
| 左右スピーカー間接続 | 96kHz/24bit (PCM) |
ただし、運用面ではLSX II LTのようなWi-Fi接続によるネットワーク再生(AirPlay 2やSpotify Connectなど)には非対応で、ホームネットワークから直接ストリーミングする使い方はできません。
つまり都度スマホやPCを経由してBluetooth再生する必要があるので、人によっては少し手間に感じる点かも。


とはいえ、ネットワーク機能を省いたことで構造がシンプルになり、コスト面でのメリットや、故障などのトラブルの心配も少なくなっているはず。



「必要な機能にだけ絞り、音づくりに集中する」──そんなKEFの割り切りを感じる仕様ですね。
デスクトップ用にはやや大きめ
ふたつめは、KEF Coda Wのサイズ感について。
ブックシェルフスピーカーとしてはやや大きめで、実際にデスク上に置いてみると、想像以上にしっかりとした存在感があります。


設置スペースもそれなりに必要なので、「デスクトップスピーカー」として検討する場合は、モニター左右の余白をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
| 製品名 | サイズ(mm) | 重量(1セット) |
|---|---|---|
| KEF Coda W | 285 × 168 × 268 | 約11.3kg |
| KEF LSX II LT | 240 × 155 × 180 | 約6.8kg |
また、接続ポートやバスレフポートが背面にあるため、壁から10〜20cm程度の距離を空けて設置する必要があり、そのスペースも確保が必要です。
リビングなどに設置する場合も、片側5kgを超える重量には注意が必要。
安定感や音の広がりをしっかり確保したいなら、フロアスタンドがおすすめ──なんですが、専用に設計された「SQ1 Floor Stand」は¥49,500(税込)と、結構高額なのもちょっと悩ましいポイント。
この点も気になった点に付け加えておきます。
まとめ


KEF Coda Wをじっくり使ってみて改めて感じたのは、「手軽さ」と「本格派」のちょうど真ん中を見事に形にしているということ。
Wi-Fiやネットワーク機能こそ省かれているものの、Bluetooth 5.4+aptX Losslessによる高音質再生、豊富な入力端子、そして何よりもKEFらしい透明感のあるHi-Fiサウンド。
クラシカルなデザインも相まって、まるでワンランク上のスピーカーのような存在感があります。


- 手軽に本格的なHi-Fiスピーカーを導入したい
- ワイヤレスでもロスレス再生を楽しみたい
- アナログからデジタルまでさまざまな機材で使いたい
- デザインや質感にもこだわりたい
Coda Wは、KEFが長年積み重ねてきたHi-Fiの哲学を、もっと身近に、もっとシンプルに楽しめる一台。
毎日の音を少しだけ特別にしてくれる──そんな“手の届くHi-Fi”に興味がある人は、ぜひ「KEF Music Gallery Tokyo」で、実際にその音を体感してみてください。
以上、カナちひ(@kana_chihi)でした。








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