「未来のガジェット」だったARグラスが、日常の道具として現実味を帯びてきました。
これまでの主役だった“目新しさ”よりも、使い勝手や映像の見やすさという“質”の追求。このジャンルの評価軸が、少しずつ変わり始めているのを感じます。
そんなタイミングで登場したのが、XREALの最新モデル『XREAL 1S』と、その体験を支えるハブ『XREAL Neo』。

手に取ってまず感じたのは、派手さではなく、道具としての作り込み。
解像度の底上げや接続まわりの快適性、そして没入感。前作のXREAL Oneから劇的に変わったように見えない一方で、「体験のコア」が丁寧に磨き上げられています。
日常の動画を3D化する機能や、ケーブル1本でSwitch 2と繋がる快適さ。スペック競争の先にあるのは、こんな「エンターテイメント・デバイスとしての心地よさ」かも知れません。
この記事では、XREAL 1SとNeoが描く新しいスタンダードについて、拡張性も含め、メリット・デメリットの両面からじっくりと解説していきます。
XREAL 1S|商品概要

外観とデザイン
これまでのXREALシリーズはシックなブラックを基調としたモデルが多かったのですが、XREAL 1Sのベースカラーは新色の「サイレントブルー」を採用。
やや無機質なブラックとはまた違う、落ち着いた上品な色味で、カフェやオフィスで使っていても違和感なく馴染んでくれそうです。

光学系にはOneと同じ「Birdbath」タイプを採用。映像を斜めに反射させることで、まるで目の前の空間に大きなディスプレイが浮かんでいるような美しい映像を映し出してくれます。

フレームの中心にはXREAL Eye用のスロットがあり、差し込むだけで簡単に6DoFへとアップデートできる拡張性も完備。

操作系は、すべて右側のテンプル(つる)に集約されています。
空間コンソールを呼び出すためのXボタンや、任意の機能を割り当てられるショートカットボタン、明るさ・音量の+/−ボタンなどが機能的に配置。

それぞれが映像として視覚的に表示されるので、適当に触っているだけでなんとなく使えてしまうのはさすがですね。

スピーカーも同様にテンプル内に内蔵。
BOSEチューニング&指向性のあるスピーカーは、音漏れを最小限に抑えつつも、小さなスリットからは想像できないほど迫力のある立体音響を実現しています。

ホストデバイスと繋ぐためのUSBケーブルは、左側のテンプル先端に接続する仕様。

高級感のあるブレイデッド(編組)ケーブルは耐久性が高く、装着時に多少引っ掛けても安心感のある作りになっています。

テンプル自体の角度も3段階に調整できる設計になっていて、微妙な装着感の違いや、画面の上下が見切れる場合にもしっかり対応可能です。

装着感の要となる鼻あてには、中空構造の「エアノーズパッド」を採用。
先端部分をつまんで簡単に引き抜くことができ、S/M/Lの3サイズから自分に合う高さに調整可能です。

付属のケースはとてもコンパクトですが、意外と収納力があり、グラス本体のほか、USBケーブルやクリーニングクロスなどをまとめて持ち運べるのも便利です。


パッケージと同梱品はこんな感じになっています。

- XREAL 1S 本体
- USB-Cケーブル
- 専用ケース
- 鼻パッド(S/M/L)
- クリーニングクロス
- ユーザーガイド
カナちひインサートレンズ用のフレームは付属していないので、メガネ派の人は別途購入する必要がありますね。
1S・One・Pro スペック比較
執筆時点での現行3モデル(XREAL 1S / One Pro / One)のスペックを一覧表にまとめました。


こうして並べてみると、XREAL 1Sの立ち位置がよく見えてきます。
といった感じで、視野的な要素ではさすがにフラッグシップには敵わないまでも、「視聴の楽しさ」という点では嬉しい下剋上が起きていました。


前作「One」からの進化点
前作Oneとの違いで、まず分かりやすいのはやっぱりカラーと仕上げの違い。






- ベースカラーがブラックから、深みのあるブルーに変更
- フレームとテンプルを繋ぐヒンジがグロス(光沢)からマット仕上げに
- フレームカバーにやや透明感のある素材を採用
- 専用ケースの色味が若干シルバー寄りに
いずれも細かなニュアンスの違いといったレベルですが、佇まいがより上品に洗練された印象です。


映像面では、解像度が1080pから1200pへ、視野角(FOV)も50度から52度へとそれぞれ向上。
ただ、実際の見え方に関しては正直「言われてみれば…」という程度。劇的な変化というよりは、視界に少しゆとりが生まれたような感覚に近いですね。


音響面では、Bose監修によるサウンドが「空間サウンド 4.0」へとアップデートされています。
「漏音抑制」や「遠距離消音技術」もブラッシュアップされているようですが、もともとXREAL Oneシリーズはサウンドもかなり良いので、こちらもパッと聴いてすぐ分かるほどの違いは感じませんでした。


そして、1Sにおける最大の進化ポイントであり、旧モデルにはない決定的な違いが「2D→3Dの全機能変換」への対応。やはりここが、今作1番の進化点だと思います。


XREAL 1S|実機レビュー


ここからは、僕が実際にXREAL 1Sをじっくり使い込んで感じた、リアルな使用感をお届けします。
結論から言うと、今回もARがもたらすワクワク感を存分に味わえる、まさに「エントリーモデルの新基軸」と呼ぶにふさわしいアップデートになっていました。
魔法のような「3D全機能変換」
今回のアップデートを語る上で外せないのが、ARグラス単体での2D→3D 変換機能。
これまでのモデルでも3D映像を楽しむことはできたんですが、それはあくまで「SBS(サイド・バイ・サイド)」という特殊な形式で作られた専用コンテンツであることが前提でした。
ただ今回のXREAL 1Sは、そんな前提条件を無視して、本体だけであらゆる2D映像をリアルタイムで3Dに変換してくれます。


使い方もシンプルで、グラス本体のXボタンを押してOSD(画面上メニュー)を呼び出し、そこから3D変換モードを選ぶだけ。
頻繁に使うなら、ショートカットボタンに割り当てておくとさらに便利に使えます。


スマホで撮った家族の写真や、普段見ているYouTube動画も、奥行きのある立体映像で見ると、また違った感動が。
もちろん、最初から3Dコンテンツとして制作された映像に比べれば、部分的に歪みが出たり、立体感に違和感を感じたりする瞬間もあるんですが、いつものアプリでそのまま楽しめる手軽さはXREAL 1Sだけの大きなアドバンテージだと思います。



「VITURE Luma Ultra」にも同様の3D変換機能があるけど、それは専用アプリを介す仕様。より自然な立体感が再現される一方、汎用性が課題でした。
画面酔いとは無縁の安定感
強力な3DoF空間固定とブレ補正もXREAL 1Sの大きな魅力。ARの最大の課題である画面酔いをしっかり抑えてくれます。
実際に新幹線での移動中に使ってみたんですが、走行中の細かな振動や揺れを拾うことなく、映像がピタッと空間に止まり続けてくれる”固定力”は、ちょっとした感動ポイントでした。


もうひとつ、実用的で便利だったのが「自動調光機能」。
これ、単に周囲の明るさに反応するだけなく、見ている映像から視線を外すと自動的に自動的に透過度を下げて周囲が見えるように切り替えてくれるんです。




作業中にコーヒーを飲みたくなった時も、いちいちグラスを外したりボタン操作をする必要がなく、安全にカップを手に取れる。
こういう痒い所に手が届く細かな気遣いが嬉しいですよね。
EyeとBeam Proの拡張性
XREALといえば、充実したエコシステムによる拡張性も忘れてはいけないポイント。
今回は実際に、XREAL EyeとXREAL Beam Proとの組み合わせを試してみました。
まずは専用カメラモジュール「XREAL Eye」。


OSDメニューから「空間アンカー」を有効にすることで、ARグラスの空間認識を3DoFから6DoFにアップデート。
周囲の景色からレンズの位置を認識し、画面に近付いてディテールを確認したり、上から画面を見下ろすように眺めたりといった現実さながらの見え方に変化します。



距離の概念が足されることでズーム操作を省略でき、とくにPC作業ではより自然な環境が生まれます。


もちろんカメラ機能も備わっていて、ちょっとしたメモ代わりに写真を撮ったり、空間映像を含めたAR動画の撮影も可能です。


続いて専用コンパニオンデバイスの「XREAL Beam Pro」。
これ自体がスマホのような機能を持っていて、さまざまなAndroidアプリをインストールして楽しめるわけですが、最大のメリットはAR空間に直接干渉するような操作性にあります。


例えばホストデバイスがスマホの場合、操作自体は手元のスマホで行う必要があり、画面を見るためにグラスの透過度を下げたり、レンズの外からディスプレイを覗き込んだりするちょっとした煩わしさがつきもの。
でもBeam Proなら、本体をリモコンやマウスのように使い、まるでVRゴーグルのように見ている映像をそのまま操作できるんです。


一度使うと、もうスマホでの視聴が面倒になるほどの快適性。XREAL Eyeほどの必需性はないけど、ぜひ試してほしい組み合わせです。



背面の高画質デュアルカメラは3D映像の撮影にも対応。撮ってすぐ見れる3Dカメラとしても面白いデバイスだと思います。


XREAL Neo|バッテリーとSwitch 2連携


今回、XREAL 1Sと同時にリリースされた、「バッテリー問題」と「接続の煩雑さ」を解消するためのパワーハブ「XREAL Neo」。
実用性においてネックになりがちな2つの問題を一挙に解決するよく出来たデバイスなので、一緒に紹介しておきます。
10000mAhで充電不安を解消
まず頼もしいのが、10000mAhという大容量バッテリーです。
ARグラスで使う電力は基本的にスマホ側が負担するため、どうしてもバッテリーの減りが早くなるというのが悩ましいポイントだったのですが、間にXREAL Neoを挟むことでグラスへの給電を肩代わりしてくれるだけでなく、接続したスマホ自体も充電しながら使用可能になります。


最大出力60Wのパワフル仕様で、スマホだけでなくタブレットやノートPCへの給電にも対応。




長時間の移動や映画鑑賞でも、「バッテリー残量を気にして楽しめない」というストレスから解放されるのは、精神衛生上めちゃくちゃ良いです。
ケーブル1本でSwitch 2接続
そして、多くのゲーマーにとって「神機能」となりそうなのが、Nintendo Switch 2などの携帯ゲーム機との連携機能。
通常、SwitchやSwitch 2を外部モニターに出力して遊ぶためには、大きなドックとACアダプタが必要で、外出先で大画面プレイをするのは至難の業でした。
しかしXREAL Neoで中継することで、USB-Cケーブル1本でドックなしでの映像出力が可能になります。


実際にマリオカートなどで遊んでみましたが、気になる遅延もほとんどなく、目の前に広がる大画面でのプレイは迫力満点。
「3D全機能変換」とも相性抜群で、立体的に動きまわるキャラクターたちが、いつものゲームをまるで別物のような新鮮な体験に変えてくれます。


Neoの大容量バッテリーのおかげで、ゲーム機本体の駆動時間も大幅に伸びるため、外出先でも残量を気にせず遊び倒せるのも嬉しいポイントでした。



Switch / Switch 2はもちろん、Steam DeckやROG AllyといったUMPCユーザーにとっては、必須級のアクセサリーと言えるかも。
持ち運びに便利なケーブル内蔵
ハードウェアとしての作り込みも優秀で、本体にはARグラス接続用のUSB-Cケーブルがあらかじめ内蔵されているので、持ち歩くケーブルが1本減ります。
また、背面にはマグネット式のスタンドが付いていて、スマホと重ねて持ったり(MagSafe的な吸着)、テーブルに立てて置いたりと、利用シーンに合わせてスマートに扱えるのも地味ながら嬉しいポイント。
縦置きにも横置きにも対応




マグネットシール付属で、iPhone/Android端末を問わず固定可能です。


「XREAL 1Sを買うなら、Neoもセットで買うべき」。そう断言できるほど、AR体験の質を底上げしてくれる必須アイテムだと感じました。



公式ストアにはXREAL 1SとNeoがセットになったお得なバンドルもあるので、ヘビーユーズする予定ならそちらもオススメです。
XREAL 1S & Neo|気になった点


ここまでご紹介したとおり、本当にハード・ソフトともに完成度の高いXREAL 1Sですが、これまで複数のARグラスを試してきたからこそ、気になる点もありました。
購入前に知っておくことで、満足度や納得感も変わってくると思うのでぜひ参考にして下さい。
光学系は「Birdbath型」
これはフラッグシップのXREAL One Proを体験したからこその感想ですが、光学系に「X Prism」ではなく、従来の「Birdbath」方式のプリズムが採用されたのは少しだけ残念でした。
One Proで新採用されたX Prismは、レンズの厚みを大幅に抑えつつ、反射や周辺の歪みも極限まで減らした素晴らしい技術という印象だったので。
もちろん、コスト面やフラッグシップとの差別化という事情は理解できますが、XREAL 1Sの実力が高いだけに「あとはX Prismだったら完璧だったのに……」と、つい高望みしたくなってしまいます。


正直、Birdbathでも十分美しい映像を楽しめるので、初めてARグラスに触れる人が気にする点ではないと思いますが、僕の正直な感想として紹介しておきます。
悩ましい購入タイミング
もうひとつ悩ましいのが、購入タイミング。
とにかく開発から発売のサイクルが短いXREALの商品は、”半年後に新モデル”というスピード感で本当に「買い時」が掴みにくいんですよね。


特に2026年は、「Project Aura」と呼ばれる次世代ARグラスの発売も噂されていて、スマホを介さずAndroid XR上で動作し、デュアルチップ搭載、さらにはAIアシスタント「Gemini」とのネイティブ連動など、これまでのARグラスの常識を覆すデバイスになると予想されています。


そうなると僕のような”新しもの好き”としては、ますます「今買うべきか」と頭を抱えてしまうわけです……
ただ、おそらくProject Auraは間違いなくハイエンド価格帯になるはず。
- XREAL 1S: 今すぐ手に入る、完成された高コスパ機
- Project Aura: 未来の体験だが、高価そうで発売はまだ先
「最先端の未来(Aura)」を待つか、「熟成された実用性(1S)」を今すぐ楽しむか──
予算と欲しい時期を天秤にかけて選ぶ必要がありそうです。



「ほしい時が買い時」という言葉もありますが、そこそこ高価な品だけに悩んでしまいそう。
まとめ


今回は、XREALの最新モデル『XREAL 1S』と『XREAL Neo』をレビューしました。
実際に使ってみるまでは、「とはいえそれほど変わらないだろう」とイメージしていたのですが、良い意味で裏切られました。 1200pへの解像度アップによる実用性の向上、Oneシリーズから受け継いだ信頼性の高い3DoF手ブレ補正、そして日常の動画を魔法のように変える3D変換機能。


これらを82gの軽量ボディに詰め込みつつ価格を抑えた本機は、間違いなく「現時点でのARグラスの最適解(ニュースタンダード)」と言えます。
- 初めてARグラスを購入する人
価格と機能のバランスが取れた最適解。 - PC作業の効率を上げたい人
1200pの広さと3DoFの固定力は、仕事道具として優秀。 - XREAL Air2 以前のユーザー
X1チップ搭載で実用性が大きく向上。買い替え・買い増しの価値は十分にあり。
そして、購入する際はXREAL Neoとセットでの検討がオススメ。
Switchがドック不要で遊べる快適さと、バッテリーを気にせず使い倒せる安心感は、XREAL 1Sの体験を何倍にも高めてくれるはずです。
カバンの中に、300インチの映画館とオフィスを忍ばせる生活。 XREAL 1Sは、エンタメも仕事も「空間」で楽しむ時代の、間違いのない選択肢になるはずです。
以上、カナちひ(@kana_chihi)でした。





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