ミラーレス一眼での動画撮影なら今最強と思うジンバルがこの「Zhiyun Crane M3(ジーウン クレーン エムスリー)」。
以前紹介した「Feiyu Tech AK2000C」もペイロード(積載荷重)2kg前後のジンバルとしては小型軽量だったが、この「Crane M3」は更にひと回り小さい。そしてパワフル。
500mlのペットボトルとさほど変わらないサイズと重さで、そのままバッグに押し込めるのでちょっとしたお出掛けから荷物を増やしたくない旅行先まで、カメラと一緒に持っていけば、いつでもどこでも手振れのない質の高い映像が撮れる。

ソニーαシリーズなど対応するミラーレス一眼を所有しているならとりあえず買っておいて後悔はない一台です!
この記事ではそんな「Zhiyun Crane M3」について特徴や優劣のポイント、設定方法や具体的な運用例などをまで色々と紹介していきたい。
この記事でわかること
⚫︎ 商品の特徴
⚫︎ 他のジンバルより優れていること
⚫︎ 残念なポイント、問題点
⚫︎ バランスの取り方、設定方法
⚫︎ 対応可能な機材の組み合わせ例
Contents
「Zhiyun Crane M3」の特徴
まずは「Crane M3」の主な特徴をまとめてみたので機材選びの際に役立てて欲しい。
⚫︎ とにかく小型&軽量
⚫︎ サイズに見合わぬパワフルさ
⚫︎ 調光可能なLEDフィルライト搭載
⚫︎ 珍しいホワイト基調のカラーリング
⚫︎ アプリ連動でスマホ操作が可能
⚫︎ 選べる3つのパッケージ
とにかく小型&軽量
「Crane M3」の特徴はなんと言ってもそのサイズ。
三脚部を取り外して一番小さくなるよう調整すれば実測で25x7x15cmとかなり小さくなるため、横にした状態で問題なくバックに入る。
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また三脚部をつけた状態でも重さ730gと同クラスの他ジンバルよりかなり軽い。(以下スペック表参照)
CRANE-M3 | Ronin-SC | AirCross 2 | AK2000C | |
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メーカー | Zhiyun | DJI | MOZA | FeiyuTech |
本体サイズ | 280x75x157mm | 220x75x200mm | 198x102x166mm | 373x147x204mm |
本体重量 | 700g | 830g | 1,050g | 1,078g |
ペイロード | 非公開 | 2kg | 3.2kg | 2.2kg |
稼働時間 | 約8時間 | 約11時間 | 約12時間 | 約7時間 |
バッテリー容量 | 1,150mAh | 2,450 mAh | 3,000mAh | 非公開 |
フル充電時間 | 約2時間 | 約2.5時間 | 約3時間 | 約1.5時間 |
動作範囲(チルト) | 309° | 315° | 360° | 230° |
動作範囲(ロール) | 333° | 315° | 360° | 306° |
動作範囲(パン) | 360° | 360° | 360° | 360° |
価格(税込) | 48,400円 | 58,433円 | 50,337円 | 45,045円 |
※価格は2022年5月5日現在のAmazon価格 |
ジンバルはカメラで質の高い動画を撮る際には必要不可欠だが、最大の欠点は荷物になることだと思う。
撮影自体が目的の場合はまだ許容できるが、外出や旅行が目的の場合、カメラに加え重くて嵩張るジンバルを持ち出すのがまず億劫。しかし、これくらいのサイズと重さであれば気軽に持ち出せる。
また、機材をセットした状態でも基本的には合計重量で2kgに満たず片手でもラクに運用出来る点はとても嬉しい。
サイズに見合わぬパワフルさ
「Crane M3」は公式のスペック表にもペイロード(積載荷重)の記載がない。
代わりにカメラ本体とレンズの組み合わせの対応表が公開されているが、いずれも最大1.0kgを超えないため、概ねこの辺りがメーカーの考える積載荷重と思われる。
しかし、SNS上では対応表に記載のない「α7SⅢ」+「FE20mm F1.8G」にショットガンマイク「ECM-B1M」をセットした状態での運用(計約1.15kg)や、合計2kg以上のを載せている人もいるようなので、実際はかなり余裕を持った設計なのだろう。
パワーに余裕があることで、マイクの脱着やレンズ交換の際もいちいちバランスを取り直す必要がなく*手間と労力が軽減できることは特にポイントが高い点だ。
※当然モーターには負担がかかるため本来は都度調整が望ましい
調光可能なLEDフィルライト搭載
本体に搭載された最大800ルーメンのLEDフィルライトは2600〜5400Kの範囲で色温度を調整可能。
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さすがに写真撮影時のフラッシュライトとはいかないが、動画撮影時の光量不足を補うには充分だ。(ISOも抑えることが出来るのでノイズ抑制にも効果的)
本体側面にあるホイールでON/OFFや明るさ、色温度の調整まで出来るなど操作性もよく考えられている。
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珍しいホワイト基調のカラーリング
ジンバルに限らずカメラ機材は黒を基調とした無骨なものが多いが「Crane M3」は白を基調としていてデザイン性が高い。
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街中で一眼レフとジンバルで撮影しているとどうしても「ガチ感」が出てしまうが、このジンバルなら少しカジュアル感が出ていいかも知れない。(軽さも相まって女性にもお勧め)
まあ、フレームの光る「M3」のロゴや、1.22インチタッチスクリーンにプリントされた「智云(ジーウン)」のプリントは主張が強く好き嫌いがありそうだが・・・。
アプリ連動でスマホ操作が可能
アプリ「ZY PLAY」とBluetoothで接続することで、仮想ジョイスティックによるスマホでの各軸の操作や、録画/停止など各種設定が可能となる(対応機種に限る)。
またジンバル本体のバージョンアップもこのアプリで行う。
個人的にはジンバルを置いて遠隔で使う機会は少ないため、スマホによる操作の需要はないが、例えば自分の背中越しに撮影したい場合などには活用できるかも知れない。
選べる3つのパッケージ
以下セットリストの通り、付属するアクセサリと予算に合わせてパッケージが選べる点もポイント。
スタンダード | コンボ | プロ | |
Crane M3(本体) | ◯ | ◯ | ◯ |
ミニ三脚 | ◯ | – | – |
フィルライトフィルター | ◯ | ◯ | ◯ |
マルチシャッターリリース(SONY用) | ◯ | ◯ | ◯ |
充電ケーブル(TypeC to micro) | ◯ | ◯ | ◯ |
充電ケーブル(TypeC to C) | ◯ | ◯ | ◯ |
EPP 収納ケース | ◯ | – | – |
ハンドホールド三脚 | – | ◯ | ◯ |
スマートフォンクランプ | – | ◯ | ◯ |
TransMount EasyGo バックパック | – | ◯ | ◯ |
オーディオケーブル(CTIA2.5to2.5) | – | – | ◯ |
オーディオケーブル(CTIA2.5to3.5) | – | – | ◯ |
オーディオケーブル(6.5mmtoXLR) | – | – | ◯ |
TransMount 拡張ベース | – | – | ◯ |
TransMount ショットガンマイク | – | – | ◯ |
TransMount マイクスポンジ | – | – | ◯ |
参考価格(税込) | 48,400円 | 58,300円 | 83,600円 |
コストパフォーマンスで見ると「スタンダード」が一番良い印象だが、SNS上では意外と「コンボ」以上に付属するバックパックの評判がいい。
音質にもこだわるなら外付けマイクと専用のマウント拡張ベースが付いた「プロ」も良さそうだが「コンボ」との差額2万5千円を考えると、別で汎用性のあるマイクを準備する方が使い勝手が良さそうに感じる。
「Zhiyun Crane M3」購入時の注意点
出典:photoAC
次に「Crane M3」の購入を検討されている方に、僕が実際に使ってみて気になった点をいくつか紹介しておきたい。
⚫︎ アクセサリの装着制限がシビア
⚫︎ アルカスイス互換でない
⚫︎ ペイロード(積載荷重)が非公開
⚫︎ カメラ制御は一部のSONY機のみ対応
⚫︎ 日本語には非対応
⚫︎ 防水性能はない
アクセサリの装着制限がシビア
「Crane M3」はそのコンパクトさゆえに展開時もフレームスペースに余裕がなく、カメラ上にマイクなどのアクセサリを装着するとチルト方向の稼働に影響が出る。
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一部機種ではカメラ本体のファインダーさえも干渉する場合があるようなので、予め使用したい機材・アクセサリについてよく確認しておいた方がいい。
尚、グリップ側面にある1/4インチのネジ穴を利用してマイクなどを装着することは出来るが、いちいち付け替えるのは面倒という方は注意して欲しい。
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アルカスイス互換でない
「Crane M3」の標準マウントはアルカスイス互換品ではないため、他の三脚などと付け替えの際に一手間を要する点も知っておきたい。
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専用プレート上にアルカスイス互換のマウントを噛ますことも出来なくはないが、その分高さが出てしまい先ほどのフレームスペースの問題や重心が高くなることでバランスは取りにくくなる。
ただし、他の機材を使用しない前提であれば、安定性もあり簡単に脱着できる「Crane M3」のマウントは良いものであり、運用次第とも言える。
ペイロード(積載荷重)が非公開
一般的に公式のペイロード内でも、組み合わせ次第では対応できない場合(フロントヘビーのズームレンズなど)もあるジンバルにおいて、敢えて対応表で使用できる機材を明記したZhiyunは誠実と言える。
ただやはり手持ちの機材を色々組み合わせる時の目安となるペイロードが公開されていないのは少々不便だし、対応表にない機材を使用する場合は実際に一つずつ試すしかない点はやはりマイナスだと感じる。
カメラ制御は一部のSONY機のみ対応
付属のUSBケーブルでカメラ本体と接続することで、ジンバル側でカメラコントロールが可能だが、対応はSONYの一部機種に限られている。(コントロールリスト参照)
非対象となる僕のα7Cでも同ケーブルでカメラへの給電は可能だが、出来れば基本機能としてBluetoothによる撮影の開始/停止くらいは出来ると良かった。
※「PRO」に付属する多機能拡張ベースと別売りのトランスミッターモジュールでBluetoothによるその他機種の制御は可能
日本語には非対応
他の多くのジンバルと同様に「Crane M3」も日本語には対応していない。(対応言語は英語と中国語のみ)
ただし、1.22インチタッチスクリーン上の基本的な機能はアイコン化されており、直感的に操作が出来るためあまり気になる点ではないはずだ。
必要に応じて日本語のユーザーガイドと併用すれば特に困ることはないと思う。
防水性能はない
これも「Crane M3」に限らないがミラーレス一眼用のジンバルは基本的に防水対応はされていない。
ジンバルはカメラ本体と同様に精密機械のため、雨天時に使用しないのはもちろん、保管時は防湿庫内が望ましい。加えて粉塵や高温にも弱い点も知っておきたいポイント。
「Crane M3」の設定方法・手順
ここからは「Crane M3」の設定方法として、カメラの取り付けとバランス調整手順を中心に紹介したい。
ちなみにしっかりバランスが取れていないまま運用すると、パワーロスによるモーターのヘタリを早めたりスムーズな稼働が出来なくなるため面倒でも毎回手順通りの設定をお勧めする。
カメラの取り付けとバランス調整
①本体に三脚を装着する
バランス調整は本体を水平に設置して行うため事前に必ず三脚を装着し立てた状態で行う。
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②各軸を取付け時の状態にする
保管状態のままではカメラを取り付けることは出来ないため、いったん各軸のロックを解除し正しい状態で再度ロックする。
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③カメラをジンバルに取り付ける
カメラにクイックリリースプレートを取り付け、ジンバル本体に装着する。
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④制御ケーブルや機材を取り付ける
撮影時の状態でしっかりとバランスを取るため、この段階で全ての機材やケーブル、NDフィルターなどを取り付ける。
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⑤チルト軸(上下方向)の水平バランスを調整する
アームのロックを解除する場合は、カメラ本体をしっかり持って行う。(カメラとジンバルが衝突しないよう注意!)
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⑥チルト軸(上下方向)の垂直バランスを調整する
レンズを上に向けた状態で垂直方向のバランスを調整。
水平・垂直のバランスが取れた状態になれば、レンズを上下方向のどの角度に向けても静止するはず。(水平・垂直はお互いに作用するため何度か調整が必要)
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⑦ロール軸(回転方向)のバランスを調整する
アームのロックを解除する場合はカメラ本体をしっかり持って行う。
液晶ディスプレイを展開して撮影する場合はその状態で調整をすること。
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⑧パン軸(左右方向)のバランスを調整する
パン軸の調整は本体を傾けて行う。どの方向に傾けても回転しない状態が正。
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⑨全体のバランス確認
チルト、ロール、パン、3軸全てのロックを解除し、全体のバランスを確認する。
全てのバランス調整が完全に行えている場合は、カメラをどの方向に向けてもそのままの形で静止するはずだ。
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ジンバル側の初期設定
機材の取り付けとバランス調整が完了後、ジンバル側で確認とトルクの適正化を行う。
注意:いずれも水平に設置し、全てのロックを外した状態で行うこと。
⑩バランスの確認
「Balance」画面で各軸の調整状態が確認可能。(パン軸は本体を少し傾けた状態で確認)
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ブルーラインはあまり気にしなくても良いが、イエローラインが出る場合は当該軸の再調整が望ましい。
⑪モータートルクの調整
「Auto Calibration」機能で使用機材に合わせたモータートルク(制御に必要な力)を自動調整する。
基本的に機材が変わらない場合は毎回行う必要はないが、ミラーレス一眼→スマホなどのように大きく重さやバランスが変わる場合は必ず行うこと。
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以上で撮影前の設定は完了。慣れれば全ての工程を5分以内で設定可能だ。
撮影モードの紹介と作例
続いて「Crane M3」の7つの撮影モードと簡単な作例を紹介していきたい。
⚫︎ パンフォローモード(Pan Follow)
⚫︎ ロックモード(Lock)
⚫︎ フォローモード(Follow)
⚫︎ 視点モード(POV)
⚫︎ Goモード(GO)
⚫︎ Vortexモード(Vortec)
⚫︎ 縦向きモード(Portrait)
パンフォローモード(PF)
ジンバルの基本のモード。チルト軸とロール軸は固定されパン(左右)方向にだけ任意で操作が可能。
同じ高さで水平を保ったまま撮影できるため、平坦な道を街撮りすようなシーンに最適。
ロックモード(L)
視点を一点に固定し撮影するモード。3軸全てが固定され、撮影者の向きに追従せず同じ方向を撮影し続けることが可能。
真っ直ぐ続く道を人を避けながら撮影する際などに適している。
フォローモード(F)
ロール(回転)軸のみ固定し、水平は保ったまま任意の方向に追従が可能なモード。
撮りたい方向を自由に撮影できるため汎用性が高い。
視点モード(POV)
3軸全てを解放し、任意の方向をフォローするモード。
画面を斜めに撮影するようなトリッキーな映像を撮りたい時に使用。GoProなどと組み合わせカーブのある滑り台などで撮影すると臨場感も出て面白いかも。
Goモード(GO)
ロール軸のみ固定されるモードで基本的な動作はフォローモード(F)と同様だが、追従のレスポンスが早い。
子供やペットの撮影など不規則な動きのある被写体を追うような際にぴったり。
Vortexモード(V)
カメラを上方向に回転させた状態で視点モード(POV)同様に全方向をフォローするモード。
グリップとレンズが真っ直ぐ並ぶため、その名の通り「渦巻き」のような映像を撮ることが可能。
縦向きモード(P)
ジンバルを水平に持ち、映像を縦向きに撮影するモード。ロール軸のみ固定(水平維持)。
スマホでの視聴に最適なため、TikTokやYouTubeでのショート動画などを撮影する際に使用。
機材の組み合わせ例
最後に色々な手持ち機材を「Crane M3」に装着してみたので参考にして欲しい。
ミラーレス一眼+単焦点レンズ+外部マイク
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外部マイクはカメラ上部にマウントすると縦方向に回転した際にフレームに干渉する為、「Crane M3」本体のグリップに用意された1/4インチのネジ穴に別売りのシューマウントで装着。
若干映像とマイクの指向にズレが生じる場合もあるが、マイクの重量を浮かすことも出来るのでお勧め。
GoPro+外部マイク
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GoPro専用マウントを使い設置。外部マイクは上記と同様、本体グリップに。
GoProの手ぶれ補正をOFF(クロップなし)にすることで画角の最大化が図れる点や、卓上に設置してジョイスティックで操作可能な点が利点。
スマートフォン
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ダイレクトに留められるスマートフォンクランプがなかった為GoProマウント経由で装着。(「コンボ」以上のセットであれば付属するクランプでダイレクトに装着可)
「Crane M3」自体が軽量で取り回しやすく撮影後のアプリ加工のしやすさが利点。
外部マイクを使用する際はスマホ側の端子を外側に向けて装着する必要がある。
まとめ
出典:photoAC
ミラーレス一眼で動画撮影をされる方に最適な「Zhiyun Crane M3(ジーウン クレーン エムスリー)」について色々とまとめてみた。
個人的には対応機材を使用であれば、初めての方にも迷わずお勧めできるジンバルだと思う。(少々高額と感じるかも知れないが映像の完成度を考えると買って後悔はしないはず!)
都内にお住まいであればソニーストア銀座にも現物が展示されている(2022年5月5日現在)ので、是非手に取って試してみてほしい。
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