こんにちは、カナちひ(@kana_chihi)です。
今年鮮烈なデビューで巷の話題をさらった「Apple Vision Pro」をはじめ、今注目を集めるVRデバイス業界にまた新たな選択肢が追加されました。
それが今回紹介する『Meta Quest 3S』。
「Meta Quest」といえば、市場で50%以上シェアを誇る人気のVRヘッドセットですが、本作はその名の通りナンバリングモデル「Quest 3」をベースに、処理性能は維持しつつディスプレイ解像度やレンズ素材をダウングレードすることで、4万円台という低コストを実現。
より手軽にVR/MRの世界を体験できる「入門機」となっています。
とはいえ実際どうなの?というと、結論「VRゲーム目的なら間違いなく買い。でも映像コンテンツ視聴だとやっぱり画質が気になる」というのが僕の評価。
この記事では、そんな「Meta Quest 3S」について、実体験をもとにメリットやデメリットなどをレビューしていきたいと思います。
Meta Quest 3S の特徴
世界でもっとも売れているVRヘッドセットシリーズ「Meta Quest」は、スタンドアローンで使える手軽さと対応コンテンツの多さが最大の魅力。
今年2024年10月に発売された「Meta Quest 3S」は、上位モデル「Quest 3」同様の処理能力を持ちながら、4万円台という低価格を実現した同シリーズの最新モデルです。
「Quest 3」との違いを大まかにまとめると基本的には「光学系の差による映像品質の違い」ということになるんですが、具体的には以下の通り。
製品スペック
モデル | Quest 3S | Quest 3 |
---|---|---|
外観 | ||
発売日 | 2024年10月15日 | 2023年10月10日 |
解像度 (片眼あたり) | 1832 x 1920 | 2064 x 2208 |
画素密度 | 20 PPD | 25 PPD |
FOV (視野角) | 水平:96° 垂直:90° | 水平:110° 垂直:96° |
リフレッシュレート | 72Hz / 90Hz / 120Hz | 72Hz / 90Hz / 120Hz |
光学レンズ | フレネルレンズ | パンケーキレンズ |
パススルー | 4MP / 18PPD | 4MP / 18PPD |
トラッキング | 6DoF | 6DoF |
コントローラー | Touch Plus | Touch Plus |
ジェスチャーコントロール | ◯ | ◯ |
駆動時間 | 2.5時間 | 2.2時間 |
ストレージ | 128GB / 256GB | 512GB |
価格 | 128GB:¥48,400 256GB:¥64,900 | ¥81,400 |
Check | Check |
もちろん解像度や視野角、レンズ構造の違いを見れば「Quest 3」の方が格上であることは間違いありませんが、それがVR体験にどれほど影響するかというと、僕はそれほど変わらないように感じています。
というのも、確か落ち着いて「パススルー映像」などを見比べれば、明らかに解像感や歪みの差を感じますが、一旦ゲームを始めてしまえばほぼ違いには気付かないレベル。
実際VRやARの解像度の指標となるPPD(画素密度)の差はほんの僅かです。
もちろん他にも「本体が分厚い」「イヤホンジャックがない」など細かい違いはあるのですが、それらを含めても3万円の価格差はかなり魅力的といえます。
外観とデザイン
改めまして、こちらが「Meta Quest 3S」。
いかにもVRヘッドセットといった見た目とサイズ感だけど、白基調の丸みを帯びた形状が結構かわいいと思いませんか?
特徴的な3つ並びのレンズは、「RGBカメラ」「VGAセンサー」「LEDフラッドライト」。それぞれ異なる役割を持っていますが、パススルー映像を担当するのは内側上のRGBカメラだけです。
空間認識用のVGAセンサーは両サイドにも搭載されていました。
レンズには年輪のような模様が特徴的な「フレネルレンズ」を採用。
「Quest 3」のパンケーキレンズより厚みがあって、同心円状の溝に沿ってノイズが乗りやすいという弱点もありますが、その分安価でコスト削減に貢献しています。
レンズは目の位置に合わせて、左右に5mmほど調整可能です。
フェイスカバーはファブリック製で通気性もよく、肌触りもいい感じ。
本体下部には丸い「アクションボタン」と、細長い「音量調整ボタン」を配置。
左サイドには電源ボタンと、USB-Cポートが用意されています。USBポートは充電用以外にもデータ通信にも対応。
スピーカーはフェイスカバーの接眼部辺り、ちょうど耳の真横にくる位置にあって、臨場感のある音を楽しめます。
「3.5mmイヤホンジャック」はコストカットのために省略されたみたいですね。
ヘッドストラップはゴム製。フィット感は申し分ないんですが、正直調節は面倒。伸びちゃいそうだし。
コントローラーは上位モデルの「Quest 3」とまったく同じモノ。
どのボタンも握った時にしっくり来る位置に配置されているし、「TruTouchハプティクス」による繊細なフィードバックなどとてもよく出来ています。
2つのトリガーボタンは、人差し指と中指で操作。
動力用に単3乾電池が入ってますが、別売の再充電可能なリチウムイオン電池に換装することも可能です。
なお、同梱品は以下の通り。
- Meta Quest 3S ヘッドセット本体
- 眼鏡用スペーサー
- Touch Plusコントローラー(左/右)
- USB-C電源アダプタ
- USB-C充電ケーブル(1m)
公式アプリ「Meta Horizon」
Meta公式の専用アプリ「Meta Horizon」と連動することで、デバイスの設定やMetaアカウントの管理、画面のミラーリングなどを行うことができます。
- Meta Questの初期設定
- Meta Quest画面のミラーリング
- Facebook/Instagramアカウントとの連動
- アプリストアの利用と購入
- Metaアカウント&アバターの管理
- アプリの利用履歴やアチーブメントの確認
- コミュニティチャット
今のところ初期設定くらいしか使う機会がないのですが、子供がVRで見ている映像を隣で一緒に楽しむみたいな使い方も可能。
コミュニティが出来て交流が増えてくると、もっと使う機会が増えそうですね。
ハンドジェスチャーでも操作可能
「Quest 3S」ではコントローラーの代わりにハンドジェスチャーを使って、カーソルを操作したり仮想キーボードの入力が可能です。
ジェスチャー | 用途 | 操作方法 | イメージ |
---|---|---|---|
ポイントアンドピンチ | 選択とアプリの起動 | 指先でカーソルを動かし、親指と他の1本の指でつまむ動作(ピンチ)で選択 | イメージ |
ピンチアンドドラッグ | 上下左右にスクロールする | 指でピンチした状態で上下左右に動かしてスクロール | イメージ |
パームピンチ | ユニバーサルメニューに戻る | 手のひらを目の高さで自分に向け、親指と人差し指でピンチしてから指を離す | イメージ |
タッチ | タイピングと直接操作 | キーボードなどを直接タップして操作 / 親指と人差し指でウィンドウを掴んで動かすことも可能 |
ジェスチャー | 用途 | 操作方法 | イメージ |
---|---|---|---|
ポイントアンドピンチ | 選択とアプリの起動 | 指先でカーソルを動かし、親指と他の1本の指でつまむ動作(ピンチ)で選択 | イメージ |
ピンチアンドドラッグ | 上下左右にスクロールする | 指でピンチした状態で上下左右に動かしてスクロール | イメージ |
パームピンチ | ユニバーサルメニューに戻る | 手のひらを目の高さで自分に向け、親指と人差し指でピンチしてから指を離す | イメージ |
タッチ | タイピングと直接操作 | キーボードなどを直接タップして操作 / 親指と人差し指でウィンドウを掴んで動かすことも可能 |
深度センサー非搭載の「Quest 3S」では手の動きをVGAカメラで認識しているので、真っ暗な環境では動作しませんが、手を視認できる明るさがあればコントローラーなしで違和感なく操作できます。
まあコントローラーが使えないシーンはあまりないかも知れませんが、例えば「料理をしながらレシピ動画を見たい」なんて時には便利かも知れませんね。
DMMやVR SQUAREの3Dコンテンツも楽しめる
「Android 12」をベースにした独自OSの「Quest 3S」では多くのAndroidアプリを使うことができ、「DMM VR動画プレイヤー」や「VR SQUARE LAB」といった人気の3Dコンテンツ視聴アプリにも対応しています。
無料コンテンツから購入したVR動画まで、画面いっぱいに広がる臨場感をぜひ体験してみてください。
眼鏡をかけたままでも使える
「Meta Quest 3S」はメガネをかけたままでも装着可能。
結構内側の空間も広く、よほど特殊な形状やサイズでなければ同梱の「眼鏡用スペーサー」を使う必要もなさそう。
一応、3S専用の度付き交換レンズも販売されているので、「コンタクトも眼鏡も付けたくない!」という人はこちらからどうぞ。
Meta Quest 3S レビュー
数あるVRヘッドセットの中で、対応アプリや視聴体験を向上するための周辺アクセサリの充実度を考えると、やはり「Meta Quest」は別格。
実際に出来ることや使ってみた感想をいろいろ試してみたので紹介します。
最高のVRゲーム体験
電源を入れた瞬間から実際の風景の中に360°浮かび上がる仮想空間は、まるで未来を覗いたような感動がありましたが、中でもVRゲーム体験はきっと誰もが夢中になるはず。
僕は普段あまりゲームはしないのですが、初めて遊んだ「Moss」では目の前いっぱいに広がる仮想空間を、所狭しと走りまわるクエル(主人公のネズミ)が、愛おし過ぎて、気付いたらバッテリーが切れるまで遊んでいました。
映像品質では「Quest 3」に劣るこのモデルを僕が購入した理由のひとつがこのゲーム体験で、正直どちらもプレイ中には大きな違いを感じなかったから。
もちろんスペックに違いがないから映像処理に気になるところは無いし、映像品質に関してもこれだけ広大なエリアと臨場感の中では細かい違いなんて気になるよしもありません。
直感的に操作できる「Touch Plusコントローラー」も、まるで自分の手のように扱えるし、本当に技術の進歩って凄い。
しいて気になるところといえば、どんどん時間が溶けていくことーー
「空間ビデオ」の視聴が可能
実は一部のiPhoneで撮影できる3D映像、「空間ビデオ」の視聴も可能。
60万円もする「Apple Vision Pro」の目玉機能が、わずか4万円台の「Meta Quest 3S」でも見れるなんて、何気に凄くないですか?
さすがに映像の美しさではAppleストアで見た「Vision Pro」には敵いませんが、これまで活用する機会のなかった「空間ビデオ」を手軽に楽しめるのは、個人的にかなり嬉しいポイントでした。
空間ビデオの視聴方法
「Meta Horizon」アプリを起動し、メニューアイコン
> ギャラリー > アップロード の順にタップ「空間」のタブから、見たい空間ビデオをアップロード
「ファイル」内にある「空間ビデオ」からアップロードした映像を視聴
PCの仮想ディスプレイとして使える
Metaの「リモートデスクトップ」アプリを介して、簡単にMacやWindows PCの仮想ディスプレイとして使うこともできます。
Wi-Fi経由なので若干のタイムラグや解像度の低さは気になりますが、仮想とはいえ最大3つの大画面のディスプレイを並べて使えるのは凄い。
だからと言ってこれを持ってカフェで作業しようという気にはなりませんが、外部モニターを使っていない人にとってはデスクワークの生産性向上ツールとして活用できるかも知れませんね。
コンシューマーゲーム機との接続は制限あり
ここまで来ると「PlayStation5」や「Nintendo Switch」などのコンシューマーゲーム機でも遊んでみたいですよね?
ただどうやら一般のゲーム機と直接つないでプレイする方法は今のところ無さそう。
厳密には、ゲーム機からリモートプレイやキャプチャボードで一旦PCにつないで、その映像を「Quest 3S」にミラーリングするという方法はあるのですが、タイムラグがあり過ぎて実用性に欠けます。
唯一「Xbox」に関しては「Cloud Gaming」というサービスを通じてプレイが可能です。
ただ有料のサブスククラウドサービスで「コンシューマーゲーム機」として遊べる訳ではないのですが、Xbox本体を所有していなくても、「ドラクエ」や「ホグワーツ・レガシー」という有名タイトルが遊べるのは大きなメリットですよね。
装着感は悪くないけど長時間はつらいかも
「Meta Quest 3S」の装着感については正直まあまあ。
「いい!」とまで言い切れない理由のひとつがデバイス自体の重さとバランス。「Meta Quest 3」と比べて前方に張り出す部分が大きく、特に下から上に頭を動かす動作や、素早く左右に振る際にはどうしても重さが気になります。
上下運動が続くとちとつらい
ソファやチェアのヘッドレストにもたれかかって動画を観る分には問題ありませんが、ストラップの締め付け感は常について回るので、長時間使いたい場合には社外製ストラップを検討してみても良いかも良いかも知れません。
Meta Quest 3S の気になったところ
分かっていたけど画質はいまいち
VRゲームなどのプレイ時には気になりませんが、バーチャル空間やパススルーに切り替わると明らかに解像度不足を感じてしまいます。基本的に装着したまま何か他の作業をするというのは結構至難の業。
またフレネルレンズ特有の歪みも気になります。周辺部はどうしてもぼやけてしまうので、映像に集中するほど目だけではなく頭を動かしてしまい、結果的に首が疲れてきます。
まあここについては、あくまで廉価版というコンセプトを理解した上で「こういうモノ」と割り切るか、予算を上乗せして上位モデルを選ぶしかなさそうです。
映画鑑賞にはやや不向き
同様の理由を含め、映画など長時間のコンテンツの視聴にはやや不向きに感じます。
その主な要因は以下の通り。
- バッテリーが最後まで持たない
- 重くて首が肩が疲れる
- 放熱が気になる
- 解像感ももう少し欲しい
もちろん大画面で迫力はあるのですが、それだけならプロジェクターの方がいいし、あえてこのデバイスで見る必要性がないというのが大きな理由。
ただこの点については、ほぼすべてのVRヘッドセットに言えることなので、もしウェアラブルデバイスで映画鑑賞をしたいのなら、僕はより軽量で装着時のストレスが少ない「ARグラス」をおすすめします。
純正ストラップのサイズ調整がしにくい
「Meta Quest」はシリーズを通じて一貫してゴムバンドのヘッドストラップを採用しているのですが、使い勝手はいまひとつ。
特にベルトの長さ調整に使うアジャスターが、片手では扱えず、両手で左右それぞれの長さを何度も微調整する必要があります。
この使いにくさは、サードパーティから多くのヘッドストラップが販売されていることからも明らかなので、廉価版とはいえ何とか改善して欲しかったポイントです。
ちなみに社外製ストラップを検討するなら、レビュアー評価の高いBOBOVRの商品がおすすめです。補機バッテリーも搭載してるしね。
まとめ
本格的なVR/MRが低コストで楽しめる『Meta Quest 3S』は、VRデバイスの入門機として本当におすすめの一台です。
映画などのコンテンツ視聴目的だと正直微妙に感じるところもなくはないけど、「思う存分VRゲームを楽しみたい!」という人には間違いなく最高の選択肢になると思います。
もちろん、より美しい映像で楽しみたいという場合は「Meta Quest 3」を選ぶ手もありますが、個人的にはあまりそこにこだわり過ぎなくてもいい気はします。
いずれ「Apple Vision Pro」並みのスペックでより現実的な価格の製品が出てくることを期待しつつ、今は「Quest 3S」で手軽にVR体験を楽しんでみてはいかが?
以上、カナちひ(@kana_chihi)でした。
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