以前「XREAL One」をレビューした際、ARグラスの”完成形”をみた気になっていたのですが、まだその先があったとは――
今回紹介するのは、「XREAL Eye」というXREAL One専用の新型カメラモジュール。

名前の通り、空間を認識する“目”のような役割を果たすこのデバイスによって、XREAL Oneが3DoFから6DoFにアップデート。
“画面をその場にあるモノとして空間に固定できる”という、まさにSFのようなMR(複合現実)体験を身近にしてくれます。
XREAL One専用モジュールというややニッチな製品レビューになりますが、これからのARグラスの未来を覗けるようなアイテムとなっているので、どんなことができるのか、完成度はどうなのかなど、ぜひ購入時の参考にしてみてください。
XREAL Eye|商品概要とスペック

「XREAL Eye」は、XREAL One専用に設計された外付けのカメラモジュール。メガネのブリッジ部分に接続して、空間認識や撮影機能を追加できる拡張パーツです。

最大の特徴は、6DoF(6軸認識)への対応によって、従来の「向き」だけでなく「位置」までトラッキングできるという点。つまり、仮想スクリーンを空間の中に“固定”して扱えるようになる、というわけです。
XREAL Eye | |
---|---|
外観 | ![]() |
サイズ | 45×12×15mm |
カメラ画素数 | 1200 万画素 |
解像度 | 写真:2016×1512 動画:1600×1200 (30fps / 60fps) |
絞り値 | f/2.25 |
撮影フォーマット | JPEG / MP4 |
重量 | 1.35g |
補正アルゴリズム | EIS⼿ブレ補正 / ノイズ低減 / アンチエイリアス処理 |
対応機種 | XREAL Oneのみ(Air/2/2 Pro非対応) |
Check |
6DoFによる映像体験は、昨年発売された「XREAL Air2 Ultra」でも再現されていますが、そちらはあくまで開発者向けのモデルで、一般ユーザー向けのARグラスとしてネイティブで6DoFに対応したのは、おそらく「XREAL One + XREAL Eye」が初。※cotolia調べ
小指の先ほどのサイズ感ということもあり、カメラ自体の性能はさすがに心許ないですが、環境が許せば”完全ハンズフリーで動画撮影できる”という利点もあります。
なお、使用にあたってはメーカーから以下の注意喚起が行われていますので、このあたりは充分気をつけたいところですね。
- XREAL Eyeは、使用時のみXREAL One本体に接続してください。使用しない場合は必ず取り外し、保管してください。
- XREAL Eyeを取り外した際は、XREAL One本体の接続端子に付属のカバーを確実に取り付けてください。異物やホコリ、水分などが端子部に侵入すると、本体の故障や誤動作の原因となる可能性があります。
- 写真撮影、または動画撮影をする際は、LEDが点灯し、シャッター音が鳴りますが、使用時は近くにいる人に配慮してください。
引用:XREAL Eye使用時の注意事項より

まさに”小さな目”、外観とデザイン
手にとってまず驚いたのがそのコンパクトさ。指先サイズで重さもわずか1.35gと、XREAL Oneに装着しても重さの違いはほとんど感じません。

12MPのRGBカメラもレンズ径3mmと本当に小さいんですが、EIS(電子動体)⼿ブレ補正や、ローリングシャッター補正など映像補正も充実。

端子部分は専用設計の21ピンで、XREAL Oneの眉間部分に直接差し込む仕様になっています。


もちろん、フレームカバーを装着したままでも問題なく装着可能。

商品パッケージと同梱品は以下のとおりです。


- XREAL Eyeカメラモジュール本体
- 端子カバー
- ユーザーマニュアル
XREAL Eyeの真価|3DoFと6DoFの違い

ARグラスの仕様を語るうえで避けて通れないのが「DoF(自由度)」という概念。
簡単にいうと「左右・上下・傾き」といった頭の”向き”だけを検知する3DoFに対し、6DoFは実際に自分が動いた方向や位置まで検知し、映像にフィードバックしてくれます。
3DoFと6DoFの違い
項目 | 3DoF | 6DoF |
---|---|---|
認識できる動き | 回転のみ(向き) | 回転 + 移動(向き + 位置) |
対応動作 | – 上下の首振り(うなずく) – 左右の回転(振り向く) – 傾き(首をかしげる) | 3DoFの動作 + – 前後移動(近づく・離れる) – 左右移動(横に動く) – 上下移動(しゃがむ・立つ) |
表示の変化 | ユーザーの“視線の向き”にだけ反応 | ユーザーの“動き全体”に応じて、視界が変化 |
没入感 | 映像は固定された場所にあるように感じる | 映像が現実空間に“そこにある”ように感じられる |
使用感の例え | 椅子に座って首を動かす感覚 | 実際に歩き回って覗き込める感覚 |
活用シーン | 映画視聴・静的な情報表示など | ゲーム・MR・仮想空間の移動・空間操作など |
これによって、たとえば仮想のスクリーンに近づいたり、視界を外してスマホを触るといった現実のディスプレイのような視聴体験を得ることができるんですが、百聞は一見にしかず、6DoFによる実際の映像をご覧ください。
映像への没入感が変わる体験
常に視界の真ん中に映像が映し出される0DoFや、平面的に映像を固定する3DoFも「AR(仮想現実)体験」としてはそれなりの感動はあるのですが、やはりMRゴーグルのような現実と仮想空間を混ぜ合わせたようなMR(複合現実)体験には一歩及びません。

まるで実際に“そこにある”ようなリアルを感じられる6DoFは特に以下のシーンで恩恵を感じられるはず。
- まるで本物の大画面がそこにあるような没入感が得られる
- 細かい文字や表を見たい時に、画面に近づいて確認できる
- 身体の動きや微妙な振動にで画面が動かず、画面酔いにくい
- 視界を自由に変えられるから、ながら作業がしやすい
この自分の動きに合わせて映像の見え方が変化するMRゴーグルのような感覚を、サングラスサイズに落とし込んだXREAL One+ Eyeは本当に革新的ですよね。

これはもう、SFの世界
今回、XREAL Eyeで6DoFを体験した瞬間「そう、これこそがARだよね…!」と思わずうなってしまいました。

目の前の空間に”存在感のある”ディスプレイが出現するという体験は、ARグラスでは今のところXREAL Oneでのみ得られるもので、このXREAL Eyeを導入する最大の魅力だと思います。
XREAL Eyeを通して見える世界

XREAL Eyeは6DoF対応というだけでなく、カメラを活用した記録映像の撮影や体験の共有など、他にも見逃せないポイントが詰まっていました。
ハンズフリーで写真&動画撮影が可能
XREAL Eyeは、XREAL One本体のカスタムボタンを押すだけで静止画/動画の撮影が可能。

- 完全ハンズフリーで見たままを撮影できる
- 撮りたい瞬間を逃さず記録できる
- XREAL Beam Proと連携すればMR空間をそのままを録画できる
といったメリットがあり、たとえば両手で作業をしながらその工程を映像で撮影したり、「自分が今見ているAR空間を、他の人にもシェアしたい」というときに非常に重宝します。
というわけで、実際にXREAL Eyeを使って撮影した映像を紹介します。
XREAL Eye単体で撮影した実際の映像
まずこちらがXREAL Eye単体で撮影した、そのままの風景映像。
やや映像は揺れますが、ヘッドマウントで撮影していることを考えると、EIS手ブレ補正もきっちり仕事をしてるように感じます。
センサーサイズやレンズの特性からしても、画質はさすがにiPhoneなどには及ばないというのが正直なところですが、完全ハンズフリーで撮れる「記録用映像」としては使いどころはありそう。
もちろん、撮影禁止エリアや人物などうっかり無断撮影しないように充分注意する必要はありますね。
「XREAL Beam Pro」を使ったMR体験
コンパニオンデバイス「XREAL Beam Pro」があれば、実際に見ているMR空間をそのまま映像として書き出すことができます。
実際の映像(サイズ含め無加工)


一般用途ではあまり活用シーンがなさそうにも感じますが、僕ような配信者やAR体験を共有したいクリエイターにとっては、この録画機能は結構嬉しいポイント。
購入を迷っている人にとっても「実際の映像を確認してから判断できる」という意味では、有意義な機能と言えるかも知れませんね。

取り付け手順とポイント

あらためて、XREAL Eyeは「XREAL One専用」のモジュール。XREAL Airシリーズなどとは互換性がないため、購入前には対応モデルに注意が必要です。
とはいえ、装着自体はとてもシンプルで、初めてでも迷うことはほとんどないと思います。
取り付け手順はたったの3ステップ
爪などで、眉間の端子カバーを外す(テンプル側からレンズ側に向けて持ち上げると外れやすい)。

XREAL Eyeのレンズを前方へ向け、端子に挿し込む。

Xボタンをダブルクリックして、設定画面を開き、「空間アンカー」を有効化する。

運用についての注意点
自宅で使う場合は基本つけっぱなしで問題ないのですが、外出先で使用する場合はいくつか注意したいことがあるので触れておきます。
- 使わないときは取り外しておく
外出時にレンズの傷や破損を防ぐ目的だけでなく、盗撮など無用な疑いをかけれないよう、必要のない時は取り外しておくのがベター。公式でも「使用しないときは外しておく」ことが推奨されています。 - 水に濡らさないこと
防水仕様ではないため、水濡れには注意。モジュールを外す際は端子カバーを戻すのを忘れないように。
また、とにかく小さいモジュールなので落としたり、端子をベタベタ触らないように注意したいところです。

XREAL Eyeの気になった点

XREAL Eyeは革新的な体験を提供してくれる反面、使用シーンによっては気をつけたい点もあります。ここでは実際に使って感じた注意点を3つの観点から紹介します。
6DoF精度は光量や空間構造に依存する
6DoFによる空間認識は、カメラ映像から得られる情報をもとに行われています。そのため、以下のような環境ではうまく距離が検知されない場合も。
- 光量が不足する夜間や、暗い部屋
- 複雑な奥行きのないシンプルな空間(例:白い壁など)
特に、深度センサーや複眼カメラを搭載したデバイスと比べると、近づいたときの動き(Z軸方向)への反映が弱く感じます。

つまり、「目の前にある画面に顔を近づけて細かく見る」ような使い方をしたい場合は、周囲の光量や空間の構造にある程度依存することを理解しておきたいところです。
屋外や公共の場では配慮が必要
カメラモジュールであるXREAL Eyeは、外観からもはっきりとそれと分かる見た目で、公共の場では周囲の人から「私が撮られているのでは…」と誤解される可能性があります。
特に人通りの多い場所や、カフェ・電車などの密な空間では配慮が必要で、実際には6DoFの空間認識のためだけに使っていても、見た目として”撮影してるように見えてしまう”のは大きなリスク。

撮影時にはシャッター音やLEDインジケーターが点灯するなどメーカー側も対策していますが、このあたりはカメラ付きARグラス特有の難しさですよね。

現時点では利用シーンを選ぶ必要があるデバイスとして、気になったポイントです。
小さくて失くしそう
そんな理由からメーカーも「使っていないときは外しておく」ことを推奨していますが、とにかく小さいXREAL Eyeは、置き忘れたりカバンの中で行方不明になるなど、外したときに紛失しやすいという一面もある気がします。

使わないときはARグラスのケースに入れておくのが一番ラクだと思いますが、XREAL Oneを取り出す際にうっかり落としてしまわないように気をつけたいですね。
まとめ|AR体験を“次のステージ”へ

「XREAL Eye」は、XREAL Oneをさらに進化させる専用モジュールとして、AR体験に“空間”という新たな軸を加えてくれる革新的なデバイスです。
- 視点に応じて動く3DoFから、位置と向きの両方を反映する6DoFへ
- ワンクリックで完全ハンズフリーの映像撮影が可能
- Beam Proと組み合わせればMR映像の録画にも対応
と、機能面の満足度は非常に高く、「これぞARの本質」とも言える体験を提供してくれます。
その一方で、使用シーンに気をつける必要があるというのも事実。特に公共の場では“撮影されている”と誤解を招く可能性もあるため、XREAL Eyeの使用にはマナーと工夫も必要かなと。

とはいえ、XREAL OneとEyeの組み合わせは、まさに「ARグラスの未来の入口」としてひとつの完成形だと感じました。ARの世界をもっと深く味わいたい人は、ぜひこの感動を体験してみてください。
以上、カナちひ(@kana_chihi)でした。
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