実はこっちが本命——
以前レビューしたSONYの最新フラッグシップヘッドホン「WH-1000XM6」と、ほぼ同時期に発売された『Bowers & Wilkins Px7 S3』。
発売タイミングも近く、価格帯も同じくらいということで、これ幸いと比較用に購入したのですが、聴き比べてみるとXM6とはまた違う魅力のある艶やかな音質で、最近ではむしろこちらをメインに使っているほどお気に入りのヘッドホンでございます。
そして、何より心を奪われたのが、この完成されたデザイン性。

音質はもちろんのこと、”身につけるモノ”でもある以上、見た目に惚れられるかどうかって意外と重要だったりしますよね。
ということで、今回はバウワースの最新ヘッドホンPx7 S3の魅力と使用感を、WH-1000XM6との比較も交えながらレビューしていきたいと思います。

Bowers & Wilkins Px7 S3 の概要

Bowers & Wilkins(通称”B&W”)は、1960年代から続くイギリスの高級老舗オーディオブランド。
音楽や映画のプロフェッショナルからも信頼されており、特にスピーカーにおいては世界中のスタジオや映画館でも使われているなど、その実力には疑う余地はありません。
今回紹介するPx7 S3は、そんなB&Wが手がけるワイヤレスヘッドホンシリーズの中でも、ハイエンド級の音質と洗練されたデザインを兼ね備えた上位ミドルレンジモデル。
とはいえ、2022年の発売当初10万円を超えていた最上位の「Px8」ほど高額ではなく、それでいて音づくりにはしっかりB&Wクオリティが息づいている、いわば、”通好みの音”を日常に落とし込んだような絶妙なポジションの一台です。

とはいえ、現時点の実勢価格ではPx8とほぼ変わらないので、今どちらを選ぶか悩む人も多いと思います。
というわけで、まずは両者の比較から。
仕様とスペック
Px7 S3 | Px8 | |
---|---|---|
![]() | ![]() | |
発売日 | 2025年4月26日 | 2022年10月28日 |
カラー | ●●● | ●●●● |
仕上げ | ファブリック | レザー |
ドライブユニット | 40mm ダイナミック型フルレンジ (バイオセルロース) | 40mm ダイナミック型フルレンジ (カーボンコーン) |
Bluetooth規格 | Bluetooth 5.3 | Bluetooth 5.2 |
対応コーデック | aptX Lossless aptX Adaptive aptX HD aptX Classic AAC SBC | aptX Adaptive aptX HD aptX Classic AAC SBC |
ノイズキャンセリング | ハイブリッドANC|マイク8基 | ハイブリッドANC|マイク6基 |
連続再生可能時間 | 約30時間 (15分充電で7時間再生可能) | 約30時間 (15分充電で7時間再生可能) |
マルチポイント接続 | 最大2台 | 最大2台 |
重量 | 約300g | 約320g |
Check | Check |
レザーとファブリックの仕上げの違いはともかく、音質部分で比較するならまずはドライブユニットの違い。
Px8は100万円クラスの同社高級スピーカー「700シリーズ」と同じ思想で設計されたカーボンコーンを使用した振動板を採用。バイオセルロースの振動板も軽さや内部損失(振動吸収性)には優れてはいるんですが、この辺りが実際聴き比べたときのわずかな音の厚みや余韻の差につながっている印象です。

逆にそれ以外の部分では、Px7 S3が優っている部分が多く、特にCD並みの音質を誇る「aptX Lossless」の対応や、ノイズキャンセリング性能など、実用面が大きく進化しています。
Px8では精度が不安視されていたマルチポイント接続の安定性もしっかり向上していて、異なるデバイス間をシームレスに切り替えできるようになったのも大きな改善点だと思います。

音質は聴き比べてどうにか分かるくらいの違いなので、デザインの好みが合えば実用性やコスパに優れる「Px7 S3」がおすすめです。
デザインと操作系
B&Wといえばやっぱりデザインの美しさ。
曲線的なフレームラインや素材の組み合わせ、控えめなロゴやボタン配置まで、とても上品にまとまっています。
僕が選んだのは「キャンパス・ホワイト」というモデルですが、ほんのりグレーがかった肌色に近い色味で、派手さはなく落ち着いた雰囲気。カジュアルにもフォーマルにも馴染む色合いで意外と使いやすいカラーだと思います。


ハウジングとヘッドバンドにはPx7シリーズ共通のキャンバス素材を採用。
Px8のレザー仕上げも確かに高級感は抜群ですが、日常づかいにはこの軽やかなキャンバスの方が気楽で好みだったりします。




華奢ですが、ちゃんと剛性もある曲線フレームも印象的ですよね。


内側のスリットから覗くケーブルまでどこかお洒落に感じてしまいます。


イヤーパッドはモチモチでフワフワのメモリーフォーム。ヘッドバンドのクッションもしっかり厚みがあって、装着感はかなり良好です。




操作系は左右にバランスよく配置。WH-1000XM6のようなタッチ操作には対応していませんが、物理ボタンで誤操作が少なく、感覚的に扱えるのが魅力です。
L側は電源とノイキャン操作


R側は音量調整や曲送り


USB-Cポートは最大96kHz/24bit対応のUSB-DACとしても使えるので、動画やゲーム用途にも強いです。


キャリングケースは本体と同じキャンバス仕上げ。折り畳めないぶんサイズが少し大きめなのはしょうがないですね。


Px7 S3を収納した様子はこんな感じ。真ん中の部分に仕切りがあって、中にケーブル2本を収納できます。




付属ケーブルは「USB-C to C」と「USB-C to 3.5mm」の2本。必要なときにすぐ有線接続へ切り替えられるのは便利ですよね。


- Px7 S3 本体
- 1.2m USB-C to 3.5mmステレオミニプラグケーブル
- 1.2m USB-C to Cケーブル
- キャリングケース
- 取扱説明書
Bowers & Wilkins Px7 S3 レビュー


ここからは、実際に使ってみて感じた魅力や使い勝手をレビューしていきます。
所有欲を満たす美しい仕上がり
まず触れておきたいのが、やはりこの所有欲をくすぐるデザイン性。
B&Wのヘッドホンはどれも上品ですが、その中でもPx7 S3の洗練さは際立っています。


その理由のひとつが、前作よりもスリムになったハウジング。
以前レビューしたWH-1000XM6のようにドーム型でボリューム感のあるデザインと比べると、Px7 S3は正面や後ろから見たときのシルエットが非常にすっきりしているんですよね。
それでいて耳全体をしっかり覆ってくれる絶妙なサイズ感。機能性と見た目のスタイリッシュさがうまく両立しています。




まるでファッションアイテムのような佇まいで、着けているだけで気分が上がる、そんなヘッドホンなんです。



装着時はもちろん、机に置いて眺めているだけでもうっとりしてしまうような造形美はさすがB&W!


クリアでフラットなクセのない音質
音質についての印象は、とにかくクリアで雑味がないこと。
歌声やピアノの旋律が真っ直ぐに表現され、シンプルに心地よいサウンドを奏でてくれます。


特に中域の響きがかなり心地よく、ボーカルの息づかいやアコースティックギターの弦の響きまでしっかり届くし、余計な味付けがされていない分、楽曲そのものの良さがストレートに伝わってくる印象で、ジャンルを問わず聴きやすいサウンドだと思います。
上位モデルの「Px8」や、SONYの最新フラッグシップモデル「WH-1000XM6」と聴き比べてみた感想はこんな感じ。
- Px8との比較
-
音の厚みや重厚感は「Px8」がやや優勢。特に音量を上げたとき、その違いが顕著です。
ただし、解像感や抜けの良さはPx7 S3の方が上に感じられ、軽快さや爽やかさが際立っています。
静かな場所でじっくり音楽に浸りたいならPx8、長時間カジュアルに楽しみたいなら聴き疲れしにくいPx7 S3、といった住み分けが良さそう。 - WH-1000XM6との比較
-
WH-1000XM6と比べると低音は控えめですが、ただそのぶん、Px7 S3は中高域の情報量が際立っていて、ポップスやロックとの相性は抜群。ベースラインもしっかり表現されるので物足りなさはありません。音のメリハリや迫力ではWH-1000XM6に軍配が上がりますが、透明感と心地よさ重視ならPx7 S3が優位と感じました。
カナちひ映画などのコンテンツ視聴では正直WH-1000XM6が圧倒的ですね。でも音楽を聴くなら僕はこっちが好み。
という感じで本当に驚くほど良い音なんですが、凄いのがこれ、iPhoneに直接Bluetooth接続したときの感想であるということ。AACより高音質な「aptX Adaptive」や「aptX Lossless」対応機器と組み合わせれば、より高精細なサウンドを楽しむことができます。


派手さよりも透明感と心地よさで聴かせるサウンド。日常的に長時間音楽を楽しみたい人には、このチューニングがぴったりだと感じました。


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高いノイキャン性能と自然な外音取り込み
ノイズキャンセリング性能については、業界トップと名高いWH-1000XM6ほどの効きではありませんが、それでも地下鉄の車内のような騒音環境でも十分に実用的で、日常使いには全く不満のないレベル。
ノイキャン特有の圧迫感がほとんどなく、耳が詰まるような不快感が少ないので、苦手な人でも使いやすいと思います。しかも音質への影響もほとんどなし。


あと、外音取り込み(パススルー)機能もなかなか優秀ですね。環境音が変に強調されることもなく、自然に周囲の音を取り込んでくれます。
操作もシンプルで、L側の「クイックアクションボタン」を押すたびに、ANC → パススルー → OFF と順番に切り替え。コンビニやカフェでの会計時など、「ちょっと周りの音を聞きたい」と思った瞬間にワンボタンでダイレクトに外音を取り込めるのは本当に便利です。


全体的に”遮音性は高いけれど快適さを損なわない”という絶妙なチューニングになっていました。
長時間でも快適に使える装着感
Px7 S3は、見た目のスリムさに反して装着感がとても良いんですよね。
型崩れしないメモリーフォームのイヤーパッドが本当にふかふかだし、側圧もちょうど良くて、頭を振ってもずれないのに長時間着けていてもどこかが痛くなることもありません。


約300gという軽量さも効いていますね。
前作から薄型化したハウジングのおかげで見た目がスマートになっただけでなく、ちゃんと装着時の”軽やかさ”にもつながっています。
装着センサーも搭載しているので、着脱に合わせて自動的に音楽を停止・再生してくれるのも実用的ですよね。


シンプル設計の専用アプリ
Px7 S3は専用アプリ「Bowers & Wilkins Music」に対応していて、基本的な操作や設定はここで完結します。


見た目もシンプルで扱いやすく、複雑な操作が苦手な人でもすぐ使いこなせるのが好印象。できることはだいだいこんな感じです。








- バッテリー残量の確認
- 環境コントロールの切り替え(ノイズキャンセリング/パススルー/オフ)
- Advanced EQ(5バンド・24段階の調整が可能)
- ペアリング中デバイスの確認・切替
- クイックアクションボタンの設定(環境コントロール or 音声アシスタント)
- オートスタンバイ設定(15分後に自動で省電力モードへ)
- 装着センサーの設定(感度を低・標準・高で調整可)
- 音楽サービス連携(Qobuz / Deezer / TuneIn Radio / SoundCloud / NTS Radio)
- ソフトウェアアップデート
実際のところデフォルト状態でも隙がなく、このアプリが必須ということもないんですが、より自分好みにサウンドを追い込みたい人や、QobuzやDeezerといった音楽サービスを使っている人にとっては、とても便利なツールになるはず。
とりあえずインストールしておいて損はないアプリだと思います。
Bowers & Wilkins Px7 S3 気になった点


どれだけ気に入っているヘッドホンでも、使っていると「ここはもう少し…」と思う部分は出てくるもの。Px7 S3についても、いくつか気になった点があったので紹介します。
折り畳めず可搬性はいまいち
ひとつめは、折りたためないことによる携帯性の悪さ。
ちろん購入前から理解はしていたのですが、やはりバッグに入れてみると結構なスペースを取ってしまうPx7 S3。


当然、専用ケースもやや大きめで、かさばるのが正直悩ましいところ。
これは以前「WH-1000XM5」の購入を断念したときの大きな理由でもあり、今回も迷ったポイントでした。


ただし、可動部分が少ないぶん安定感はあり、ハウジングも180°回転してくれるので装着感は良好。首にかけて持ち歩く前提なら、そこまで気にする必要はないかもしれません。


まあ、可搬性を考えるならイヤホン一択なわけで、ここはデザイン性とトレードオフということで納得はしています。
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キャンパス素材の汚れやすさ
もうひとつ気になったのが、Px7 S3の特徴であるキャンバス素材の汚れやすさ。
特に「キャンパス・ホワイト」は見た目こそ上品で清潔感のあるカラーですが、汗や皮脂、ちょっとした擦れなどがどうしても目立ちやすく、使っているうちに徐々にくすんできます。


もちろん同じファブリック素材の専用ケースも同様。面積が大きいぶん、余計に汚れが目立つのはA型の僕には少々つらいところ。


もちろんヘッドホンは使ってナンボの道具なのですが、この価格帯であれば防汚加工くらいは欲しかったというのが正直な感想です。
通話品質と遅延は平均的
通話性能について、ANC(アクティブノイズキャンセリング)と「ADI Pure Voice」というBowers & Wilkins独自の音声処理技術のおかげで、騒がしい場所でも声がこもりにくく、相手にクリアに届けられる点は評価できるポイント。
ただし、音質そのものは正直平均的で、「特別優れている」とまでは言えない印象です。


遅延(音ズレ)についても、動画視聴や音楽再生ならまったく気にならないレベルですが、リズムゲームのようにボタン操作と音のタイミングがシビアな用途では、多少の遅れを感じることも。
全体としては「日常使いには十分、こだわるなら有線で」というくらいの話ですが、WH-1000XM6と比較するとやや弱い印象を受けたのでご参考まで。
まとめ


「Bowers & Wilkins Px7 S3」は、透明感のある自然なサウンドと、所有欲を満たす美しいデザインが魅力のワイヤレスヘッドホンでした。
特に透明感のあるフラットな音質が本当に秀逸で、派手さよりも心地よさを重視した音作りは長時間聴いても疲れにくく、日常の音楽体験をグッと豊かにしてくれることは間違いありません。
- 高音質・高解像度で自然なサウンドを楽しみたい
- デザインや質感にもこだわりたい
- 自宅や職場などで腰を据えて音楽を聴く時間が多い
- ノイキャンの強烈さよりも快適さを重視したい
実際、僕自身も同時期に購入した「WH-1000XM6」よりも今はこちらを使うことが多いほどお気に入り。音質・デザイン・装着感・操作性のすべてが高いレベルでまとまっていて本当に素晴らしい完成度。



価格は約68,000円と安くはありませんが、使うたびに「買ってよかった」と思わせてくれる満足度の高さはさすがB&Wですよね!
「日常を少し特別なものにしてくれるヘッドホンが欲しい」という人には、自信を持っておすすめできる一台なので、気になった人はぜひ試してみてください。
以上、カナちひ(@kana_chihi)でした。


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