「音に包まれるって、こういうことなんだ」──このヘッドホンの音にはじめて触れたときの感想はそんな感じでした。
周りの雑音がふっと遠ざかって、気づけば目の前に“音楽だけ”が残っている感覚。電車の揺れやカフェのざわめきすら、心地よい静寂に変えてくれます。
今回レビューするのは、そんな世界観さえ感じさせてくれる、ソニーの最新ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM6」。

長年ノイズキャンセリングのトップを走り続けてきた「1000Xシリーズ」の最新モデルであり、大ヒット作となった前作「WH-1000XM5」からさらに進化を遂げた注目のワイヤレスヘッドホンです。
世界最強クラスと評されるノイズキャンセリングに、音楽をありのまま再現するクリアなサウンド。
さらに、外出時にうれしい“折りたたみ機構の復活”など、ソニーのフラッグシップ機にふさわしい完成度に仕上がっています。
この記事では、数日間じっくり使ってみたWH-1000XM6の感想や、使い勝手など忖度なくレビューしていきたいと思います。

商品概要:WH-1000XM6はどんなヘッドホン?
WH-1000XM6は、ソニーが長年積み重ねてきたノイズキャンセリング技術の集大成とも言えるモデル。
前作XM5の発売から約3年。
新たに搭載された「QN3プロセッサ」は、処理性能が従来の約7倍に向上し、加えて12個のマイクを組み合わせることで、より緻密かつ自然なノイズ処理を実現しています。
音響面でも、360 Upmixによる立体音響やLE Audio対応、高音質コーデック(LDAC)など、サウンド体験を底上げする要素が満載。
そして何より注目したいのは、グラミー賞受賞歴を持つ4人のマスタリングエンジニアとの共創。

この4人についてちょっと調べてみたのですが、本当にそうそうたる面々。
ランディ・メリル | クリス・ゲリンジャー | マイク・ピアセンティーニ | マイケル・ロマノフスキ | |
---|---|---|---|---|
所属 | Sterling Sound | Sterling Sound | Battery Studios | Coast Mastering |
主な受賞歴 | グラミー賞 アデル『25』:アルバム・オブ・ザ・イヤー(2017年) アリアナ・グランデ『Sweetener』:最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム(2019年) レディー・ガガ「Shallow」:最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス(2019年) テイラー・スウィフト『Folklore』:アルバム・オブ・ザ・イヤー(2021年) など | グラミー賞ノミネート レディー・ガガ『Born This Way』 – 年間最優秀アルバム賞(2012年) リアーナ『Work』 – 年間最優秀レコード賞(2016年) リゾ『Cuz I Love You』 – 年間最優秀アルバム賞(2020年) リル・ナズ・X『Montero』 – 年間最優秀アルバム賞(2021年) デュア・リパ「Don’t Start Now」 – 年間最優秀レコード賞 など | グラミー賞ノミネート マディソン・ビアー『Silence Between Songs』 – 最優秀イマーシブアルバム賞(2024年) マディソン・ビアー『Make You Mine』 – 最優秀ダンス・ポップ・レコーディング賞など | グラミー賞 アリシア・キーズ『The Diary of Alicia Keys』 – 最優秀イマーシブ・オーディオ・アルバム賞(2024年) 『Bates: Philharmonia Fantastique – The Making of the Orchestra』 – 最優秀クラシック・アルバム技術賞(2023年)など |
主なコラボレーション | レディー・ガガ、ケイティ・ペリー、アリアナ・グランデ、ポール・マッカートニー、テイラー・スウィフト、ジャスティン・ビーバー、浜崎あゆみ、BTS など | リアーナ、レディー・ガガ、エド・シーラン、アヴリル・ラヴィーン、キャロライン・ポラチェック、ジョン・バティステ、BLACKPINK、BTS など | ボブ・ディラン、デペッシュ・モード、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、マディソン・ビアー、マイルス・デイヴィス など | アリシア・キーズ、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、ザ・イーグルス、ボニー・レイット、ペンタトニックス、スター・ウォーズ4,5,6サウンドトラック など |
映画や楽曲制作にも精通するソニーだからこそできた、“音楽本来の姿をそのまま届ける”ためのこだわりチューニングが、本当に心地よく耳に響いてきます。
製品スペック
もちろん音響面だけでなく、見た目や使いやすさもしっかりと進化。基本的にはXM5を踏襲しつつも、細部までしっかりとアップデートされています。
製品名 | WH-1000XM6 |
---|---|
外観 | ![]() ![]() |
カラー | ブラック/プラチナシルバー |
ドライバーユニット | 30mm ダイナミック型ドライバー |
周波数特性 | 4 Hz – 40,000 Hz (JEITA) |
連続音声再生時間 | 最大30時間(NC ON時) / 最大40時間(NC OFF時) |
対応コーデック | SBC / AAC / LDAC / LC3(LE Audio) |
立体音響 | 360 Reality Audio / 360 Upmix for Cinema |
通信方式 | Bluetooth 5.3 / ステレオミニジャック |
重量 | 約254g |
その他機能 | タッチ操作、マルチポイント接続、外音取り込み、AIビームフォーミングマイク、風ノイズ低減、Google アシスタント搭載 など |
付属品 | キャリングケース、オーディオケーブル、USB Type-C ケーブル |
Check |
このあたりについては外観を見ながら解説しています。
シンプルで上質なデザイン
まず外観については、前作のXM5を踏襲したようなデザインで、ミニマルでありつつもより高級感にあふれた質感となっています。


前作からの大きな改善点のひとつである、「折りたたみ機構」も全体の雰囲気を壊さない程度の最小限のギミックになっていて、とても洗練された印象。


コンパクトに再設計された収納ケースで、持ち運び時のストレスを大きく軽減。カバンの中の限られたスペースにちゃんと収まるのは、当たり前だけど大事な部分です。




イヤーカップは少し大きめかな?と感じましたが、その分耳をすっぽりと覆うことができますね。
クッション材には肌触りの良い合成レザーが使われてして、肌触りはかなりソフトです。密閉性が高く、長時間装着しているとどうしても蒸れてきますが、意外と不快感は感じません。


ヘッドバンドのクッションの厚みはやや控えめですが、XM5より幅が少し広くなっていて、頭頂部への圧が分散されるような設計になっています。


個人的にはスリムなヘッドバンドの方が好きなんですが、装着時のバランスと安定感はかなり良くなっていると感じました。
物理ボタンは電源とNC/AMBボタンの2つ。わずかに立体感を持たせてあって指先での識別がしやすく、誤操作を防止してくれます。


R側のハウジングにはタッチ操作用のセンサー、L側には電源ボタンとカスタムボタン(ノイキャン切り替えなど)が配置されています。




薄いシリコンに覆われたようなしっとりとした表面加工も、ヒンジ部分の細かい仕上げも、とにかく高品質で所有欲をしっかり満たしてくれます。


WH-1000XM6 レビュー:”静寂”と”音”の体験
WH-1000XM6を実際に使ってみて分かったのは、長年このモデルの発売を心待ちにしていた僕の期待を超えるヘッドホンとしての”質”と”完成度”の高さ。
ここからは、日常の中で感じたリアルな使用感から、音質やノイズキャンセリング、装着感などを忖度なく紹介していきます。
ありのままの音をまっすぐに
WH-1000XM6の音の傾向はフラット。高音から低音までが素晴らしい解像度で、まっすぐ素直な音を届けてくれます。
ドライバー自体は30mmとやや控えめなサイズですが、中高音の透明感や空間の奥行きがしっかりと表現されていて、どちらかというと静かな曲ほど“良さ”が際立つ印象。
鍵盤のタッチが、まるで指先の重さごと伝わってくるような繊細さだったり、アコースティックギターの余韻の滑らかさ、静かに語りかけてくるようなボーカルの自然な定位感。
そのどれもが、耳の中ではなく目の前から自然に聴こえてくるこの音場感は、まるで上質なスピーカーのようです。
以前レビューした「ULT WEAR」のような鮮烈で刺激的なサウンドとは対照的ですが、だからといって物足りないわけではなく、むしろ何時間でも聴いていたくなる絶妙なバランス。
“音楽を楽しむ”という点において、これ以上のワイヤレスヘッドホンにはなかなか出会えないと思います。


映画の音も立体的に感じられる
もうひとつ感動したのが、ソニー独自の立体音響技術「360 Upmix for Cinema」による立体表現。


これは、特別なコンテンツでなくても音の広がりや方向性を疑似的に再構成して、立体的に聴かせてくれる技術なんですが、その完成度がまた面白いんです。
といっても、「飛行機が頭上を横切るシーンで、音が耳の後ろから前へ移動していく」とか、「背後から迫ってくる音に思わず振り向く」みたいな”その場にいる感覚”ではなく、普段頭の中に響いているような音が、空間全体に広がって包まれるようなイメージ。


さすがに”映画館にいるみたい”とまでは言いませんが、実際映像への没入感は高まるし、この立体感がこの小さなハウジングの中で再現されていることに、正直ちょっと驚きです。
自宅で映画やアニメをよく観る方にとっては、この機能だけでもWH-1000XM6を選ぶ価値は充分にあると思います。
“自分の音”にチューニングできる楽しさ
WH-1000XM6をもっと自分好みの音で使いたいという人は、専用アプリ「Sony Sound Connect」で細かくカスタマイズすることも可能です。
以下のようにプリセットも豊富で、気分やジャンルに合わせてサッと切り替えられるのも便利。
プリセット | ニュアンス | イメージ |
---|---|---|
Bright | 明るめ | 高音が強調され、全体的にシャキッとした音色に |
Excited | 元気・迫力重視 | 低音と高音を持ち上げたダイナミックなサウンド |
Mellow | やわらかめ | 全体的に角が取れて丸い、やさしい音色 |
Relaxed | リラックス | 中低音が中心で落ち着いた雰囲気、長時間向け |
Vocal | ボーカル強調 | 中域を引き出し、歌声を際立たせるチューニング |
Treble Boost | 高音強調 | 高音域がくっきり、金物や弦の粒立ちが際立つ |
Bass Boost | 低音強調 | ベースやキックがしっかり鳴る、重心が低い音 |
Speech | 音声くっきり | 会話やナレーション向け、明瞭度重視 |
Manual | カスタム(手動) | 5バンドEQを自由に設定して自分好みに調整可 |
さらに、XM6では10バンドのカスタムイコライザーに対応していて、自分好みの音に細かくチューニングできるのもフラッグシップモデルならではの特権です(ULT WEARなどは5バンドまで)。
試しに低域を少しだけ上げてみると、ベースやキックの輪郭が立ち上がってきて、音にグルーヴ感が加わるし、中域を軽く持ち上げると、ボーカルが前に出てよりパーソナルな響きになります。
個人的にはデフォルトの状態が一番バランスよく感じるので、あくまで補助的な機能ですが、すべての音楽を“自分仕様”で使いたいという人にとっては、かなり満足度の高いポイントになるはずです。
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“無音の世界”を再現する強力なノイキャン性能
ソニーのオーディオを語る上で外すことができないのが「ノイズキャンセリング性能」。


前作XM5よりチップ性能やマイクの数などが大きくアップデートしたことで、より緻密に環境音を検知・抑制できるようになっています。
XM5からの進化点
WH-1000XM6 | WH-1000XM5 | |
---|---|---|
統合プロセッサ | V2 | V1 |
ノイズキャンセリングプロセッサ | QN3 | QN1 |
マイク数 | 内側:4基 / 外側:8基 | 内側:2基 / 外側:6基 |
これについては、同じソニーのULT WEARやAirPodso Proと聴き比べてみてもその差は明らかで、高音から低音までさまざまなノイズが大音量で響く地下鉄のホームでも、信じられないくらいの静寂に変えてくれます。
さらに凄いのが、そんな強力なノイキャンにも関わらず、あの特有の耳がキュッとなるイヤな感じがほとんどないんです。



これまでノイキャンの強さと圧迫感は比例するものだと思ってたので、目から鱗でした。


不自然な圧迫感もなく、長時間使っていても耳が疲れにくい。このあたりは「さすがソニー」と思わず唸ってしまうクオリティでした。


長時間でも疲れにくい、心地よい装着感
WH-1000XM6を長時間使ってみて感じたのは、「軽い」というより”負担が少ない”という印象。
実際、重さは約254gで、とくに軽いわけではないのですが、装着バランスがとても良く、実際にはずっと軽く感じます。
ヘッドバンドは細身ながら、やや強めの側圧(横の締めつけ)とのバランスで、頭頂部に圧が集中しにくい設計。
イヤーカップの耳をすっぽり包むようなサイズ感と、ふわっとしたクッションのやさしいフィット感も好印象です。
装着感は長時間使うほどに違いが出てくる部分で、短時間の試聴ではわからない場合も多いですが、実際に数日使ってみた感想としても「かなり上手く調整されているな」という印象でした。
直感的に使えて、通話もクリア
日々のちょっとした動作もストレスなくこなせる“使いやすさ”がしっかり作り込まれているなと感じます。
操作はタッチセンサー式で、右のイヤーカップを指でなぞるだけで音量調整・曲送り・一時停止などが直感的に操作可能。
もちろん反応もスムーズで誤操作も少なく、非常に快適です。
また、XM5から引き続き搭載されている「装着検出機能」も本当に便利で、ヘッドホンを外すと自動で音楽が一時停止、再び装着すれば再生が再開されます。
リスニングの合間に誰かと話したり、席を立ったりする場面が多いときにはかなりありがたい機能ですよね。
通話性能もかなり優秀
日常使いという意味で、WH-1000XM6のマイク性能の優秀さも嬉しいポイント。
実際に電話で試してたのですが、相手からは「外出先にいることに気づかなかった」とのこと。なるほど、確かにAIノイズリダクションの効果はありそうです。


風の影響も受けにくい構造になっているので、出先でよくオンライン会議などをする人にも使いやすいかも知れません(ヘッドホンなのでカメラONだと辛いかも知れませんが)。
NC/AMBボタンを2回押すことで、マイクのON/OFFができるのもいいですよね。
気軽に持ち出しやすい工夫も充実
実は僕、前作のXM5は見送ったんですが、その理由は「携帯性の悪さ」。
ソニーストアで視聴した音質には惹かれつつも、ケースの大きさや、折りたたんでバックにしまえないのがどうしても不満で購入に踏み切れなかったんです。
そういう背景もあり、今回一番嬉しかったのが折りたたみ機構の復活。


これによって、付属のキャリングケースもぐっとコンパクトかつ厚みを抑えた設計になり、バッグに入れたときの収まりが段違いに良くなっています。
内部にはケーブル収納用のスペースもしっかり確保されているのも嬉しいポイントです。


移動中やカフェでの作業、旅行や出張など、“最高の音を持って出かける”というスタイルにぴったりの仕上がりになっているのもWH-1000XM6の強み。
日常のあらゆるシーンで、常に持ち歩きたくなる1台です。
WH-1000XM6 の惜しいところ
というわけで、WH-1000XM6はとても完成度の高いヘッドホンですが、実際に使ってみて「ここだけは少し気になる」というポイントも正直に挙げておきます。
側圧がやや強めで、個人的には少しつらい
装着感自体は全体的に快適なのですが、側圧(横の締めつけ)がやや強めで、長時間装着しているとこめかみ辺りがじんわりと痛くなってくる感じがします。


もちろん頭の大きさや形も人それぞれだし、ヘッドホン自体がまだ新しく、ヘッドバンドやクッションがしっかりしている影響もあるかも知れませんが、個人的にはもう少しふんわり包み込んでくれる方が好み。
もう少し使い込んで馴染んでくるとちょうど良くなるのかもしれませんね。
逆にワイヤレスヘッドホンの限界を感じる
WH-1000XM6の音質の高さは間違いありませんが、だからこそ有線接続時との差が非常に惜しいと感じてしまいます。


特にiPhoneはAACコーデックのみで、LDACによるハイレゾ相当の再生に非対応なのは痛いですよね。



DSEEで擬似的に補完も可能ですが、ロスレス再生を楽しみたい場合は、「QCC Dongle Pro」などのBluetoothトランスミッターを使いましょう。
とはいえ、これはWH-1000XM6の問題というより、スマホ側(特にiOS側)の仕様に左右される部分なので、LDACやLC3でしっかり音質を追い込みたいという人は、ソース環境を考慮する必要がありますね。
まとめ:”音と静けさ”のちょうどいい答え
「音楽をもっと丁寧に聴きたい」
「自分だけの世界に没頭したい」
そんな日常のささやかな要望に、WH-1000XM6はどこまでもまっすぐに応えてくれるヘッドホン。
世界トップクラスのノイキャン性能、申し分ない音質と尖りすぎないフラットなチューニング。折りたたみ機構の復活でモバイル性も向上した、まさにソニーのフラッグシップモデルに相応しい完成形といえる仕上がりになっています。
- 通勤やカフェ作業など、外でも静かな環境を確保したい人
- とにかく高音質で音楽を楽しみたい人
- タッチ操作や自動停止などのスマートな操作性を求める人
- 映像コンテンツへの没入感を高めたい人
- 予算に余裕があり、所有欲を満たしたい人
実際、WH-1000XM6を購入してからはデスクでもスピーカーではなく、こっちで音楽を聴く機会が多くなったほど僕自身かなり気に入っているヘッドホン。



6万円という価格は決して安くはないですが、それに見合う価値が、このヘッドホンには確かにあります!
場所を気にせず、大好きな音楽をいつもより少し上質に楽しみたい人にとって、このヘッドホンは最高のパートナーになってくれるはずです。
以上、カナちひ(@kana_chihi)でした。


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